TRAINING · トレーニング EV.5 システマティックレビュー

よく訓練されたランナーではインターバルでVO2maxが上がらなかった。7研究中6研究が有意差なし

よく訓練された持久系ランナーにおけるインターバルトレーニングとVO2maxの用量反応関係を扱ったシステマティックレビュー。7研究のうち6研究がVO2maxの有意でない改善を報告し、有意な改善は1研究のみだった。一方、インターバルセッションのトレーニングインパルスとVO2maxの改善のあいだには関係が観察された。

種目 ラン 出典 Journal of Sports Sciences(2021) 読了 約5分 公開 2026年8月3日
Athlete participating in an outdoor marathon with race number 658 during daytime.
Photo by RUN 4 FFWPU on Pexels

この研究でわかったこと

  1. 01 7研究のうち6研究が、インターバルトレーニング介入後のVO2maxについて有意でない改善(P > 0.05)を報告した。有意な改善(P < 0.05)を報告したのは1研究のみである。
  2. 02 一方で、実施されたインターバルトレーニングのセッション・トレーニングインパルス(IT STRIMP)とVO2maxの改善のあいだには関係が観察された。
  3. 03 著者らは、よく訓練されたランナーにおいてインターバルトレーニングがVO2maxを改善する有効性は依然として不確かだとしつつ、この負荷解析の手法がインターバルの期分けに実用的な応用をもたらすとしている。

よく訓練された持久系ランナーでは、インターバルトレーニングによるVO2maxの改善が統計的に有意にならないことが多い。7研究を整理したシステマティックレビューでは、有意な改善を報告したのは1研究にとどまった。一方で、インターバルの負荷量とVO2maxの改善のあいだには関係が観察されている。


用語について。 「TRIMP(training impulse)」はトレーニング負荷を強度と時間から数値化する指標である。この論文は介入期間を通じて特定の強度域に費やされた時間を計算する方法をとっており、「IT STRIMP」はインターバルトレーニングのセッション単位のトレーニングインパルスを指す。

1. 何を調べた研究か

よく訓練されたランナーにおいて、インターバルトレーニングがVO2maxを改善する有効性を確かめること。そして実施されたインターバルの負荷量とVO2maxの変化のあいだに用量反応関係が存在するのかを検討することである。

後者の問いのために、著者らはトレーニングインパルスという指標を用いた負荷解析を導入している。

2. これまで分かっていたこと

持久走の成功は主として最大有酸素パワー(VO2max)、その利用率、そしてランニングエコノミーによって決まる。文献のなかでVO2maxを改善する手段として同定されてきたのは、持続的トレーニングとインターバルトレーニングの二つである。

しかし、よく訓練されたランナーにおいてインターバルトレーニングがVO2maxを改善する有効性は不確かなままだった。実施した負荷と変化のあいだに用量反応関係があるのかも同様である。

3. どう調べたのか

五つの電子データベースでキーワード検索を実施した。組み入れ基準を満たしたのは7研究である。

トレーニング負荷とVO2maxの変化の関係を解析するため、介入期間を通じて特定の強度域に蓄積された時間を計算することでトレーニングインパルスを算出した。

抄録には参加者の総数、性別の内訳、介入期間の範囲は記載されていない。

4. VO2maxは上がったのか

ほとんど上がらなかった。

所見研究数
VO2maxの有意でない改善(P > 0.05)6研究
VO2maxの有意な改善(P < 0.05)1研究

7研究のうち6研究で、インターバルトレーニング介入後のVO2maxの改善は統計的に有意にならなかった。有意な改善を報告したのは1研究のみである。

一方で、実施されたインターバルトレーニングのセッション・トレーニングインパルスとVO2maxの改善のあいだには関係が観察された。個々の研究では有意にならなくても、負荷の大きさと変化の大きさが対応している、という構図である。

著者らの結論は二段になっている。よく訓練されたランナーにおいてインターバルトレーニングがVO2maxを改善する有効性は依然として不確かである。それでもなお、この新しい負荷解析の手法はインターバルのセッション負荷とVO2maxの改善のあいだの関係を示しており、よく訓練された長距離ランナーのトレーニング計画のなかでインターバルを期分けするうえで実用的な応用をもたらす、と。

5. インターバルをどう位置づけるか

VO2maxを目的に据えないほうがよい、というのがこの論文から取り出せる方向である。

すでに鍛錬されたランナーでは、インターバルを積んでもVO2maxの数字が動かないことのほうが多い。したがってインターバルの効果をVO2maxテストで判定していると、効いていても「効いていない」と結論しかねない。

とはいえ、これはインターバルが無駄だという話ではない。この論文が扱ったのはVO2maxという単一の指標であり、ランニングエコノミー、乳酸閾値、レースタイムへの効果は検討されていない。持久走の決定要因として著者ら自身がVO2max以外に利用率とエコノミーを挙げている以上、そちらで効いている可能性は残る。

負荷との関係が観察された点は、実務では期分けの材料になる。同じ「インターバル」でも、セッションあたりの負荷が違えば結果も違う。本数や強度を漫然と決めるのではなく、負荷として数えたうえで配置するという発想である。ただし何TRIMPを目指すべきかという具体値は示されていない。

そして対象は「よく訓練された」ランナーである。市民ランナーやトライアスロンを始めて間もない層では、同じことが当てはまるとは限らない。他のメタ分析では鍛錬度の低い集団でHIITによるVO2maxの改善が確認されている。

6. この研究の限界

まず規模である。7研究という数は、用量反応関係を論じるには少ない。

統合も記述的である。システマティックレビューであってメタ分析ではないため、効果量が算出されていない。「6研究で有意でなかった」という数え上げは、効果の大きさを示すものではない。個々の研究の検出力が低ければ、実在する小さな改善を捉えられない。

負荷解析の手法も新規である。著者らが「新しい方法」と述べているとおり、TRIMPによる強度域の時間積算がVO2maxの変化をどれだけ説明するかは、この論文で確立されたわけではない。

観察された関係も因果ではない。研究をまたいだ対応関係であって、同一集団で負荷を変えて効果を比べた結果ではない。

そして参加者像が分からない。「よく訓練された」の定義、人数、性別構成はいずれも抄録に記載がない。

公表年も古い部類に入る。以降に蓄積された研究は含まれていない。

7. よくある疑問

よく訓練されたランナーにインターバルは無駄なのか

そうは書かれていない。示されたのは、7研究のうち6研究でVO2maxの改善が統計的に有意にならなかったという事実である。VO2maxという単一の指標に絞った話であり、ランニングエコノミーやレースパフォーマンスへの効果を否定するものではない。著者らも有効性は依然として不確かだという表現にとどめている。

負荷とVO2maxの改善に関係はあるのか

観察されている。インターバルトレーニングのセッション・トレーニングインパルス(IT STRIMP)とVO2maxの改善のあいだに関係が見られた、と報告されている。ただしこれは7研究にまたがる観察であり、負荷を増やせばVO2maxが上がることを介入で確かめたものではない。

なぜ鍛錬されたランナーでは効果が出にくいのか

この論文はその理由を説明していない。持久走の成功が最大有酸素パワー、その利用率、ランニングエコノミーによって決まるという枠組みは示されているが、鍛錬度が上がるとVO2maxが動きにくくなる機序については触れられていない。

8. 出典

  • Parmar A, Jones TW, Hayes PR. The dose-response relationship between interval-training and VO2max in well-trained endurance runners: A systematic review. Journal of Sports Sciences, 2021.
  • DOI: https://doi.org/10.1080/02640414.2021.1876313
CITATION The dose-response relationship between interval-training and VO2max in well-trained endurance runners: A systematic review(Journal of Sports Sciences, 2021) doi:10.1080/02640414.2021.1876313 ↗