TRAINING · トレーニング EV.5 システマティックレビュー

ブロック期分けと従来型で優劣はつかなかった。8〜12週の範囲では差が出ていない

鍛錬されたロードサイクリストの期分けモデルを扱った7研究のシステマティックレビュー。ブロック期分けは週8.75〜11.68時間、従来型は週7.5〜10.76時間の練習量で、いずれもVO2maxとピーク有酸素パワーを改善した。ただし8〜12週の範囲で特定の期分けモデルを支持する証拠は現時点で得られていない。

種目 バイク 出典 International Journal of Sports Physiology and Performance(2023) 読了 約6分 公開 2026年8月3日
Cyclists competing in a race on a scenic mountain road in summer.
Photo by Susanne Jutzeler, suju-foto on Pexels

この研究でわかったこと

  1. 01 ブロック期分けは高・中・低強度のブロックが1〜8週の範囲で、練習量は週8.75〜11.68時間。ピラミッド型とポラライズドの両方の強度配分が使われていた。
  2. 02 従来型の期分けは練習負荷の周期的で漸進的な増加を特徴とし、練習量は週7.5〜10.76時間でピラミッド型の強度配分が使われていた。
  3. 03 ブロック期分けはVO2max、ピーク有酸素パワー、乳酸閾値、換気閾値を改善し、従来型はVO2max、ピーク有酸素パワー、乳酸閾値を改善した。ただし8〜12週の範囲で特定のモデルを支持する証拠は得られていない。

ロードサイクリストの期分けについて、ブロック型と従来型のどちらが優れているかは決まっていない。7研究を整理したシステマティックレビューの結論である。どちらもVO2maxとピーク有酸素パワーを改善したが、8〜12週の範囲で特定のモデルを支持する証拠は現時点で得られていない。


用語について。 「ブロック期分け」は高度に集中したトレーニング負荷の局面を用いる方式、「従来型の期分け」は高量・低強度の期間から始めて量を減らし高強度の割合を増やしていく方式を指す。「TID(強度配分)」は練習量を強度域ごとにどう振り分けるかの型である。

1. 何を調べた研究か

鍛錬されたロードサイクリストにおける期分けモデルと生理的パラメータの主な特徴を、強度配分・練習量・期分けモデルの記述から明らかにすること。それが著者らの目的である。

背景には、よく計画された期分けが最も重要な大会でピークパフォーマンスを実現する、という前提がある。

2. これまで分かっていたこと

期分けの理論は複数存在し、それぞれに支持者がいる。ブロック期分けは高強度を集中させることで適応を引き出すという発想、従来型は量から強度へと重心を移していくという発想である。

しかし鍛錬されたサイクリストを対象に、実際にどの負荷と配分が用いられ、どの生理指標が動いたのかを研究をまたいで整理したものがなかった。

3. どう調べたのか

Scopus、PubMed、Web of Scienceを、関連用語を網羅したリストで検索した。

組み入れ対象は、サイクリストにおけるトレーニングの期分けの効果を検討し、トレーニング負荷(量、強度配分)と期分けの詳細を記述した研究である。条件を満たしたのは7研究だった。

4. 二つのモデルは何が違ったのか

負荷の置き方と配分の型が違い、動いた指標もわずかに違う。

項目ブロック期分け従来型の期分け
構成高・中・低強度のブロック(1〜8週)練習負荷の周期的で漸進的な増加
練習量週8.75〜11.68時間週7.5〜10.76時間
強度配分ピラミッド型とポラライズドの両方ピラミッド型
改善した指標VO2max、ピーク有酸素パワー、乳酸閾値、換気閾値VO2max、ピーク有酸素パワー、乳酸閾値

練習量の範囲はどちらも似ている。週8.75〜11.68時間と週7.5〜10.76時間で、この幅は真剣に取り組むエイジグルーパーの現実からそう遠くない。

改善した指標もほぼ重なる。ブロック期分けで換気閾値が加わっている点だけが違いだが、これはモデル間で比較した結果ではなく、各研究で観察された内容の列挙である。

さらに、日単位でプログラムを組むアプローチがVO2maxと換気閾値を改善したことも報告されている。

著者らの結論は明快である。鍛錬されたロードサイクリストにおける8〜12週の期間について、特定の期分けモデルを支持する証拠は現時点で得られていない。ただし異なる期分けモデルの季節をまたぐ影響を系統的に検討した研究はほとんどない、とも付け加えている。

5. どの期分けを選べばいいのか

この論文が示すのは「選択の根拠がまだない」である。だとすれば、判断は別の軸に移る。

どちらのモデルでもVO2maxとピーク有酸素パワーは改善している。つまり8〜12週という単位で見るかぎり、モデルの選択が結果を左右する証拠はない。それなら、自分の生活のなかで実行しやすいほう、続けやすいほうを選ぶという判断が筋が通る。

ブロック期分けは高強度を数週間集中させる方式なので、その期間に他の負荷(トライアスロンならスイムとラン)をどう配置するかという問題が生じる。従来型は変化が緩やかで、三種目を並行して積むうえでは組みやすい。この論文はその比較をしていないが、実行可能性の差は現実に効く。

期間の限定にも注意がいる。証拠が得られていないのは8〜12週の範囲についてであり、シーズンを通した長期の影響については、著者らが「ほとんど検討されていない」と述べている。年間計画の設計にこの結論をそのまま持ち込むことはできない。

強度配分については、ブロック期分けでピラミッド型とポラライズドの両方が使われていた点が示唆的である。ここでも単一の正解は示されていない。

6. この研究の限界

まず規模である。7研究という数で二つの期分けモデルと複数の生理指標を扱っており、各モデルを支える研究数は限られる。

比較が行われていないことも重要だ。この論文はモデルごとに観察された内容を並べているのであって、同一集団でモデルを比較した結果を統合したものではない。「ブロック期分けで換気閾値が改善した」は、従来型より優れていることを意味しない。

効果量も示されていない。システマティックレビューであってメタ分析ではないため、改善の大きさを比べられない。

参加者の情報も欠けている。7研究に含まれたサイクリストの総数、性別、競技レベルの分布は抄録に記載がない。

そして期間が短い。8〜12週という窓での検討にとどまり、季節をまたぐ影響は未検証である。著者ら自身がそこを今後の課題として挙げている。

7. よくある疑問

ブロック期分けと従来型のどちらを選ぶべきか

この時点では決め手がない。著者らは、鍛錬されたロードサイクリストにおける8〜12週の期間について、特定の期分けモデルを支持する証拠は現時点で得られていないと明記している。どちらもVO2maxとピーク有酸素パワーを改善しており、差がつくだけの根拠がない。

どちらのモデルがどの指標を動かしたのか

ブロック期分けはVO2max、ピーク有酸素パワー、乳酸閾値、換気閾値を改善した。従来型はVO2max、ピーク有酸素パワー、乳酸閾値を改善している。さらに日単位でプログラムを組むアプローチはVO2maxと換気閾値を改善した。ただしこれは各研究で観察された内容の列挙であって、モデル間の比較ではない。

練習量はどれくらいだったのか

ブロック期分けの研究では週8.75〜11.68時間、従来型の期分けでは週7.5〜10.76時間だった。どちらも似た範囲に収まっており、この幅がエイジグルーパーの現実的な練習量と大きく離れていない点は参照しやすい。

8. 出典

  • Galán-Rioja MÁ, González-Ravé JM, González-Mohíno F, Seiler S. Training Periodization, Intensity Distribution, and Volume in Trained Cyclists: A Systematic Review. International Journal of Sports Physiology and Performance, 2023.
  • DOI: https://doi.org/10.1123/ijspp.2022-0302
CITATION Training Periodization, Intensity Distribution, and Volume in Trained Cyclists: A Systematic Review(International Journal of Sports Physiology and Performance, 2023) doi:10.1123/ijspp.2022-0302 ↗