TRAINING · トレーニング EV.5 システマティックレビュー

陸上競技のトレーニングは六つの型に整理できる。組み合わせが単独を上回った

陸上競技における身体トレーニングの手法を47件の論文から整理したシステマティックレビュー。HIITとSIT、サーキット、プライオメトリクス、種目特異的な筋力トレーニング、期分け、ウェアラブルの活用という六つの戦略が抽出され、組み合わせた手法が単一の方法より概して優れた結果をもたらすと結論づけている。

種目 ラン 出典 Jurnal Master Penjas & Olahraga(2025) 読了 約5分 公開 2026年8月3日
Outdoor sports track with lanes numbered 1 to 3, ready for an athletic event.
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この研究でわかったこと

  1. 01 六つの主要なトレーニング戦略が抽出された。HIITとSIT(VO2maxとランニングエコノミー)、サーキットトレーニング(心血管持久力)、プライオメトリクス(爆発的パワー)、種目特異的な筋力トレーニング(投擲)、期分け(長期の負荷管理)、ウェアラブル技術の統合(リアルタイムのモニタリング)。
  2. 02 組み合わせた手法が単一の方法による介入と比べて概して優れた結果をもたらす、というのが結論である。
  3. 03 統合は主題別に行われており、効果量は算出されていない。

陸上競技の身体トレーニングは、六つの戦略に整理できる。47件の論文を主題別に統合したシステマティックレビューの結論である。そして組み合わせた手法が単一の方法による介入より概して優れた結果をもたらす、とされている。ただし効果量は算出されておらず、戦略間の優劣は比較できない。


用語について。 このレビューは「主題的(thematic)」な統合を行っており、効果量を数値で統合するメタ分析ではない。したがって以下に出てくるのは対応づけと方向性であって、どれだけ効くかという量ではない。

1. 何を調べた研究か

陸上競技における多様な身体トレーニングの手法を、系統的に分析すること。それが著者らの目的である。

問いの立て方が「どれが最も効くか」ではなく「どんな手法が使われ、どう整理できるか」に置かれている点が、このレビューの性格を決めている。

2. これまで分かっていたこと

陸上競技のトレーニング研究は、種目も目的も方法も多岐にわたって蓄積されてきた。HIITの効果、プライオメトリクスの効果、期分けの理論といった個別の知見は積み上がっている。

整理されていなかったのは全体像である。どの手法がどの目的に対応し、それらがどう組み合わされているのか。この論文はその見取り図を作ろうとしている。

3. どう調べたのか

Google Scholar、PubMed、ScienceDirect、SPORTDiscus、そしてDOAJの五つの電子データベースを検索した。対象期間は2013年から2024年である。

組み入れ基準は、陸上競技における身体トレーニングを論じた原著研究、システマティックレビュー、メタ分析。データの抽出と統合は主題別に行われた。

基準を満たしたのは47件の論文である。抄録には各論文の参加者数や競技レベルは記載されていない。

4. 六つの戦略はどう対応づけられるのか

戦略と目的が一対一に近い形で並べられている。

戦略対応づけられた目的
HIITとSITVO2maxとランニングエコノミーの改善
サーキットトレーニング心血管持久力
プライオメトリクス爆発的パワーの開発
種目特異的な筋力トレーニング投擲種目
期分け長期のトレーニング負荷管理
ウェアラブル技術の統合リアルタイムのパフォーマンスモニタリング

この対応表は、陸上競技のトレーニング研究がどの目的にどの手段を当ててきたかの見取り図である。目新しい対応関係はないが、六つが横並びに置かれることで、自分の練習に欠けている軸が見えやすくなる。

そして結論として著者らが述べているのは、組み合わせた手法が単一の方法による介入と比べて概して優れた結果をもたらす、という点である。

5. 自分の練習にどう当てはめるか

チェックリストとして使う。それがこのレビューの現実的な使い道である。

六つの戦略のうち、持久系のトライアスリートに直接関わるのはHIITとSIT、サーキット、プライオメトリクス、期分け、ウェアラブルの五つである。種目特異的な筋力トレーニングは投擲種目に対応づけられているため該当しない。

そのうえで「組み合わせが単独を上回る」という結論を素直に読めば、HIITだけ、あるいは筋トレだけに偏った組み方より、複数の軸を持たせるほうがよいということになる。ただしこれは効果量による比較ではなく、レビューの記述にもとづく判断である。

一方、この論文からは処方を作れない。どの戦略をどの割合で、何週間、どの強度で行うかという情報は示されていない。強度配分や期分けの具体的な型を知りたければ、それぞれの主題を扱った個別のメタ分析に当たり直す必要がある。

ウェアラブルが戦略のひとつに数えられている点は、この分野の現状を反映している。ただしそれによってパフォーマンスがどれだけ改善したかという記述はなく、モニタリング手段としての位置づけにとどまる。

6. この研究の限界

まず効果量がない。主題別の統合であるため、六つの戦略のあいだで優劣を比べることも、それぞれの効果の大きさを見積もることもできない。

組み入れの粒度も揃っていない。原著研究、システマティックレビュー、メタ分析が同じ47件のなかに混在しており、同じ原著研究が複数のレビューを通じて重複して数えられている可能性がある。

対象集団も分からない。47件の背後にどれだけの参加者がいて、どの競技レベルだったのかは記載されていない。

バイアスリスクの評価にも触れられていない。組み入れ基準は示されているが、各論文の質がどう判定されたのかは追えない。

そして「組み合わせが優れる」という結論を支える具体的な比較が示されていない。どの組み合わせがどの単独手法を上回ったのかが分からないため、実務上の判断材料としては弱い。

7. よくある疑問

結局どのトレーニングをすればいいのか

このレビューは単一の答えを出していない。示されているのは、六つの戦略がそれぞれ別の目的に対応づけられること、そして組み合わせた手法が単一の方法より概して優れた結果をもたらすということまでである。効果量が算出されていないため、戦略間の優劣を比べることはできない。

VO2maxとランニングエコノミーには何が対応するのか

この整理ではHIITとSITが対応づけられている。ただしどちらがどれだけ効くかという比較や、何週間どの強度で行うかという処方は示されていない。主題別の統合であって、量的な比較ではない。

ウェアラブルはトレーニング戦略に数えられるのか

このレビューでは六つの戦略のひとつとして、リアルタイムのパフォーマンスモニタリングのためのウェアラブル技術の統合が挙げられている。ただしそれによってパフォーマンスがどれだけ改善したかという記述は抄録にない。

8. 出典

  • Andika IGA, Repiyasa IW, Sarwan MA. A Systematic Review of Various Physical Training Approaches in Athletics. Jurnal Master Penjas & Olahraga, 2025.
  • DOI: https://doi.org/10.37742/jmpo.v6i2.187
CITATION A Systematic Review of Various Physical Training Approaches in Athletics(Jurnal Master Penjas & Olahraga, 2025) doi:10.37742/jmpo.v6i2.187 ↗