競泳の強度配分は、専門とする距離によって型が変わる。高度に鍛錬されたスイマーを扱った9研究のシステマティックレビューでは、短距離がポラライズドと閾値型、中距離が閾値型とピラミッド型、長距離が主にピラミッド型という対応が確認された。ただしこれは実態の記述であって、最良の配分を比較で決めたものではない。
用語について。 「強度配分(training intensity distribution、TID)」は練習量を強度域ごとにどう振り分けるかの型を指す。ポラライズドは低強度と高強度への二極化、ピラミッド型は低・中・高の順に量が減る形、閾値型は閾値付近の中強度を厚くする形である。「メゾサイクル」は数週間単位のトレーニング区分を指す。
1. 何を調べた研究か
高度に鍛錬されたスイマーの持久トレーニングについて、強度配分、練習量、期分けモデルという三つの観点から主要な特徴を明らかにすること。それが著者らの目的である。
背景にあるのは、よく計画された期分けが主要な国内・国際大会でのピークパフォーマンスを可能にする、という認識である。
2. これまで分かっていたこと
期分けの重要性は競泳の現場で共有されてきたが、実際にエリートスイマーがどのような配分と量で練習しているのかは、研究をまたいで整理されていなかった。
とくに専門種目の距離によって配分が変わるのかどうかは、個別の報告が散在するのみだった。
3. どう調べたのか
Scopus、PubMed、Web of Scienceを、関連用語を網羅したリストで検索した。組み入れ対象は、水泳におけるトレーニングの期分けの効果を検討し、トレーニング負荷(量、強度配分)と期分けを報告している研究である。
合計3487件の研究が特定され、重複の除去とタイトル・抄録によるスクリーニングを経て17件が残った。全文レビューでさらに8件が除外され、最終的に9研究がシステマティックレビューに含まれた。
エビデンス水準は、介入研究(3件)が1b、後ろ向きの観察研究(6件)が2bと評価されている。
4. 種目によって配分はどう違うのか
距離が長くなるにつれて、配分の型が移り変わる。
| 専門種目 | 強度配分の型 |
|---|---|
| 短距離 | ポラライズドと閾値型 |
| 中距離 | 閾値型とピラミッド型 |
| 長距離 | 主にピラミッド型 |
短距離から長距離へ進むにつれて、ポラライズド寄りからピラミッド型寄りへと移行している。閾値型が中距離を中心に現れる点も含めて、連続的な変化として読める。
期分けについては、選ばれた研究の多くで確認されたモデルが、メゾサイクルのような単位における波状の周期を特徴とするものだった。生理的適応と技術の習得の両方を促す形式である。
著者らの結論は、高度に鍛錬されたスイマーが主要種目にもとづく練習量と強度配分に従っている、というものである。そのうえで、ブロック期分けとリバース期分けが水泳パフォーマンスに与える効果については、さらなる実験的研究が必要だとしている。
そして重要な留保が続く。トレーニングの観察研究はエビデンスとして限られており、異なるトレーニングや期分けのアプローチがより良い結果をもたらすかどうかは不明である、と。
5. トライアスリートはこの整理をどう使うか
種目の距離と配分の対応という発想は移せるが、数値は移せない。
トライアスロンのスイムは競泳の長距離に近い性質を持つ。その意味では、長距離スイマーが主にピラミッド型をとっていたという所見が最も近い参照になる。低強度を土台にしつつ、閾値付近の中強度をある程度厚く持つ形である。
ただし注意がいる。この整理は「エリートスイマーがそうしている」という実態の記述であって、その配分が最良だと比較して確かめたものではない。9研究のうち6研究は後ろ向きの観察研究であり、著者ら自身がその限界を明記している。
さらにトライアスロンでは、スイムの後にバイクとランが続く。スイム単独の最適配分がそのまま当てはまる保証はない。三種目の総量のなかでスイムにどれだけ割けるかという制約も、競泳選手とは根本的に違う。
期分けについては、波状の周期という形式が広く使われていたという記述にとどまる。何週間で一巡させるか、どの程度の振幅を持たせるかといった具体は示されていない。
6. この研究の限界
まず規模である。9研究という数は、三つの距離区分と複数の期分けモデルを論じるには少ない。しかも介入研究は3件にとどまる。
デザインも観察が中心である。6件が後ろ向きの観察研究で、エビデンス水準は2bと評価されている。エリートスイマーがどう練習しているかは分かっても、そうすべきかどうかは分からない。
参加者数も示されていない。9研究に含まれたスイマーの総数、性別、年齢の分布は抄録に記載がない。
配分の定量的な内訳もない。「ピラミッド型」といった型の名前は示されるが、各強度域に何パーセントを割いていたのかという数値は抄録から読み取れない。
そして著者ら自身が、異なるアプローチがより良い結果をもたらすかどうかは不明だと述べている。現状の記述であって、推奨ではない。
7. よくある疑問
自分の種目に合わせて配分を変えるべきなのか
このレビューが示しているのは、高度に鍛錬されたスイマーが主要種目にもとづく練習量と強度配分に従っている、という実態の記述である。その配分が最良だと比較して確かめたものではない。著者らも、異なるトレーニングや期分けのアプローチがより良い結果をもたらすかどうかは不明だと明記している。
トライアスロンのスイムはどの配分に当たるのか
この論文はトライアスロンを扱っていない。競泳の距離区分にもとづく整理であり、長距離スイマーが主にピラミッド型をとっていたという所見は参考になるが、バイクとランが続くレースの練習配分として検証されたものではない。
ブロック期分けやリバース期分けはどうなのか
著者らはそれらの効果について、さらなる実験的研究が必要だと述べている。このレビューで多くの研究に共通して確認されたのは、中期サイクル単位の波状の周期を特徴とする期分けモデルだった。
8. 出典
- González-Ravé JM, Hermosilla F, González-Mohíno F, Casado A, Pyne DB. Training Intensity Distribution, Training Volume, and Periodization Models in Elite Swimmers: A Systematic Review. International Journal of Sports Physiology and Performance, 2021.
- DOI: https://doi.org/10.1123/ijspp.2020-0906