エリートランナー向けに開発された厚底カーボンシューズ(AFTシューズ)は、市民ランナーのジョギングペースでも効果があるのでしょうか。最新の研究により、遅いペースであっても、従来型シューズと比べてランニングエコノミーを有意に改善することが明らかになりました。
1. 何を調べた研究か
厚底カーボンシューズは、エリート選手が高いスピードで走る際にランニングエコノミーを大きく向上させることが知られています。しかし、トップ選手よりも遅いペースで走る一般的な市民ランナーにおいても、同様の恩恵があるのかは議論の余地がありました。「カーボンプレートを曲げるほどの大きな力がかからない遅いペースでは、効果が薄れるのではないか」という仮説を検証するため、中級レベルのランナーを対象に、複数の異なるシューズを履き比べて低速走行時のランニングエコノミーを調査しました。
2. これまで分かっていたこと
これまでの研究の多くは、速いペースで走るランナーを対象としており、AFTシューズがランニングエコノミーを改善することが示されてきました。一方で、遅いペースでの効果については一貫した見解が得られていませんでした。
3. どう調べたのか
ランナーに対して、3つの異なるシューズ(従来型のランニングシューズ、AFTシューズ、両者の特徴を組み合わせたプロトタイプシューズ)を着用させ、複数の異なる遅いスピードでトレッドミル上を走行させました。実験はランダム化クロスオーバー試験として実施され、各参加者は3つの異なる日にすべてのプロトコルを繰り返しました。走行中の酸素消費量(ランニングエコノミー)、ストライドやピッチなどの時空間指標、および主観的な快適性が測定されました。
4. 低速でもシューズの恩恵は得られるのか?
結果として、AFTシューズは従来型シューズと比較して、すべてのテスト速度において代謝コストを有意に削減することがわかりました。注目すべきは、ペースが遅くなるにつれて効果が薄れるという「速度依存性」は見られなかった点です。 また、ストライド長やピッチといったフォームの指標にはシューズ間で違いが見られず、エコノミーの改善は時空間変数の変化では説明できないことが示唆されました。
5. 快適性はパフォーマンスにどう影響するか?
この研究では、高い快適性がランニングエコノミーの向上に関連していることが観察されました。つまり、ランナーが「快適だ」と感じるシューズほど、エネルギー消費を抑えて走れる傾向があったのです。市民ランナーがシューズを選ぶ際には、理論上の反発力だけでなく、自分にとっての履き心地の良さがパフォーマンスに直結する重要な要素となります。
6. この研究の限界
使用されたシューズは特定のブランドのモデルであり、他社のAFTシューズでも全く同じ効果が得られるかは断言できません。さらに、長距離の疲労が蓄積した状態での効果については検証されていません。
7. よくある疑問
厚底カーボンシューズは初心者でも履いていいですか?
本研究では遅いペースでのジョギングでもランニングエコノミーの改善が確認されたため、ペースの遅いランナーでも恩恵を受けることができます。ただし、自分にとって快適に感じるかどうかが重要です。
シューズによってフォームは変わりますか?
この実験では、シューズの違いによるストライドやピッチなどの有意な変化は見られませんでした。フォームを大きく変えることなく、エネルギー効率が向上したと考えられます。
8. 出典
Bolliger, A., Spengler, C. M., & Beltrami, F. G. (2026). Impact of Advanced Footwear Technology on Running Economy at Slower Running Speeds: A Randomised, Cross-Over Investigation. Sports Medicine - Open.