先進的なフットウェアテクノロジー(厚底シューズ)が長距離ランニングのパフォーマンスを向上させることは知られていますが、その効果の大きさには個人差があります。本研究では、自分の接地時間を最も短くできるシューズを選ぶことが、ランニングエコノミー改善の鍵となることが明らかになりました。
1. 何を調べた研究か
長距離ランナーが異なる最新の厚底シューズ(先進的フットウェアテクノロジー:AFT)を履いた際に、ランニングエコノミー(RE)の変化に影響を与える生体力学的(バイオメカニクス)要因を特定することを目的とした研究です。
2. これまで分かっていたこと
厚底シューズはランニングエコノミーを改善し、長距離走のパフォーマンスを向上させることが広く知られています。しかし、同じシューズを履いても、アスリートによって得られる恩恵(改善の程度)には大きなばらつきがあることが課題となっていました。
3. どう調べたのか
ランダム化被験者内クロスオーバー試験として実施されました。長距離ランナーを対象に、3種類の標準的な厚底シューズ(Nike Air Zoom Alphafly Next% 2、Puma Fast-R Nitro Elite v1、Asics Metaspeed Sky+)を履き比べて走ってもらいました。
それぞれのシューズを履いた条件で、呼気ガス交換データ(エネルギーコスト)、3次元の運動学データ、および時空間変数(接地時間など)を測定し、ランニングエコノミーの個人内差と生体力学パラメーターとの関連を分析しました。
4. 接地時間の短縮はランニングエコノミーを改善するのか?
結論として、接地時間の短縮はランニングエコノミーの向上と有意に関連していました。
分析の結果、接地時間が短くなるほど輸送のエネルギーコストが低下し、具体的には接地時間が4ミリ秒短縮するごとにランニングエコノミーが約1%改善することが示されました(β = 0.025, 95% CI [0.010, 0.040], p = 0.002)。 一方で、3つのシューズの間で集団レベルでのランニングエコノミーの有意な差は見られませんでした(p = 0.246)。つまり「全員にとって一番良いシューズ」というものは存在しませんでした。
5. 自分に最適な厚底シューズをどう選ぶべきか?
すべてのアスリートにとって最適な唯一の厚底シューズモデルは存在しないため、自分自身の接地時間が最も短くなるシューズを選ぶことが、パフォーマンスを最大化するための有効な戦略となります。 アスリートとシューズの相互作用(相性)によって効果が変わるため、実際に履き比べて自分の走りに最も適したモデルを見つけることが重要です。
6. この研究の限界
本記事は抄録のみに基づいているため、対象となったランナーの正確な人数や競技レベル、具体的な走行ペースなどの詳細な条件については不明です。また、接地時間以外のバイオメカニクス的要因(例えばストライド長や関節角度など)がどの程度影響していたかについても、抄録からは確認できません。
7. よくある疑問
一番ランニングエコノミーが良くなるシューズはどれですか?
本研究でテストされた3つのシューズ(Nike Air Zoom Alphafly Next% 2、Puma Fast-R Nitro Elite v1、Asics Metaspeed Sky+)の間で、集団全体としての優劣はありませんでした。個人ごとに最適なモデルは異なります。
接地時間が短くなるとどれくらいエコノミーが改善しますか?
研究結果によると、接地時間が4ミリ秒減少するごとに、ランニングエコノミー(輸送のエネルギーコスト)が約1%改善することが示されています。