女性のチームスポーツ選手において、HIITはVO2max、反復スプリント能力、方向転換速度、スピード、爆発的筋力を改善した。13研究230名を整理したシステマティックレビューの結論である。効果は競技レベルによらない一方、体組成の結果だけは種目をまたいで一貫しなかった。
用語について。 「反復スプリント能力(repeated sprint ability、RSA)」は短いスプリントを短い休息で繰り返す能力、「方向転換速度(change of direction speed)」は走行中に向きを変える速さを指す。いずれもチームスポーツで重視される指標で、持久系種目とは評価の重心が異なる。
1. 何を調べた研究か
女性のチームスポーツ選手において、HIITが身体パフォーマンスに与える効果をまとめること。それが著者らの目的である。
対象を女性に限定した理由も明示されている。女性アスリートにおけるHIITへの適応についての情報が限られており、それが男性アスリートと異なる可能性があるためだ、というものである。
2. これまで分かっていたこと
HIITが有酸素能力を高める手段として有効であることは、男性を中心とした研究で積み上げられてきた。
問題は、その知見を女性にそのまま当てはめてよいかだった。ホルモン環境や筋線維構成の違いから適応が異なる可能性が指摘されているが、女性を対象にした研究は相対的に少ない。この論文はその空白に向けられている。
3. どう調べたのか
Google Scholar、PubMed、Web of Science、Cochrane Library、ProQuest、Science Directを2022年まで検索した。
組み入れ基準は、英語で書かれた縦断研究であること、参加者がエリート・サブエリート・大学レベルの女性チームスポーツ選手であること、そしてHIITの強度が最大心拍数の80〜100%であることである。年齢やトレーニング経験による除外基準は設けられていない。
主要なアウトカムはVO2max、反復スプリント能力、方向転換速度、スピード、爆発的筋力、体組成の六つ。条件を満たしたのは13研究、参加者は計230名だった。
4. 何がどれだけ改善したのか
パフォーマンス指標は改善し、体組成だけがばらついた。
| アウトカム | 改善した研究数 | 効果量の範囲 |
|---|---|---|
| VO2max | 5研究 | 0.19 〜 1.08 |
| 反復スプリント能力 | 3研究 | 0.32 〜 0.64 |
| 方向転換速度 | 5研究 | 0.34 〜 0.88 |
| スピード | 4研究 | 0.12 〜 0.88 |
| 爆発的筋力 | — | 0.39 〜 1.05(幅あり) |
| 体組成 | — | 種目をまたいで一貫しない |
効果量の範囲がいずれも広い点が目につく。VO2maxで0.19から1.08、スピードで0.12から0.88と、研究によって小さな効果から大きな効果まで開きがある。統合された単一の値ではなく範囲として報告されているのは、このレビューがメタ分析ではないためである。
体組成については、観察されたチームスポーツをまたいで結果が一貫しなかったと記述されている。他のアウトカムが方向として揃っているのとは対照的である。
著者らの結論は、HIITが女性のチームスポーツにおいてVO2max、反復スプリント能力、方向転換速度、スピード、爆発的筋力に有意な効果を持ち、それは競技レベルによらない、というものである。
5. 持久系の女性選手はどこまで参照できるか
対象がチームスポーツである点を、まず割り引く必要がある。
反復スプリント能力と方向転換速度は、トライアスロンでは直接問われない。この二つを除くと、参照できるのはVO2maxとスピード、そして爆発的筋力である。
VO2maxが5研究で改善したという所見は、女性選手におけるHIITの有酸素効果を支持する。ただし効果量の範囲が0.19から1.08と広く、期待値を絞り込めない。ベースラインの体力水準やプロトコルの違いが影響している可能性があるが、この論文はその切り分けを行っていない。
体組成が一貫しなかったという結果は、実務的にはむしろ有用かもしれない。HIITを体重管理の手段として組む根拠は、少なくともこのレビューにはない。同じ構図はレクリエーションレベルの女性を対象にした別のメタ分析でも見られており、体脂肪率は動いても体重と脂肪量は動かなかったと報告されている。
強度の条件は明快である。最大心拍数の80〜100%という帯が組み入れ基準になっていた。中強度で代替した場合にどうなるかは、この論文の対象外である。
6. この研究の限界
まず規模である。13研究230名という数は、六つのアウトカムに分けると各層がかなり薄くなる。実際、各アウトカムで改善が確認されたのは3〜5研究にとどまる。
統合が記述的である点も大きい。メタ分析ではないため効果量が統合されておらず、範囲として示されるにとどまる。0.19から1.08という幅を、どう自分に当てはめればよいのかを判断する材料がない。
対象種目もチームスポーツに限られる。持久系種目の女性選手を対象にした結果ではない。
男女の比較も行われていない。適応が男性と異なる可能性が動機として挙げられているにもかかわらず、このレビュー自体は女性のみを扱っており、違いを検証したものではない。
そしてHIITプロトコルの中身が示されていない。強度の帯(最大心拍数の80〜100%)以外に、本数、時間、頻度、期間の条件は抄録から読み取れない。
7. よくある疑問
女性は男性と適応が違うのか
この点がこのレビューの動機である。著者らは、女性アスリートにおけるHIITへの適応に関する情報が限られており、それが男性アスリートと異なる可能性があるため重要だ、と述べている。ただしこのレビュー自体は男女を直接比較したものではなく、女性選手における効果をまとめたものである。
体組成は変わらないのか
結果が一貫していない。観察されたチームスポーツをまたいで結果がばらついたと記述されており、体組成についてはこのレビューから方向性を読み取れない。改善が一貫していたのはVO2maxや反復スプリント能力といったパフォーマンス側の指標である。
どれくらいの強度で行った研究なのか
組み入れ基準としてHIITの強度は最大心拍数の80〜100%と定められている。年齢やトレーニング経験による除外基準は設けられていない。効果は競技レベルによらないというのが著者らの結論である。
8. 出典
- Stankovic M, Djordjevic D, Trajkovic N, Milanovic Z. Effects of High-Intensity Interval Training (HIIT) on Physical Performance in Female Team Sports: A Systematic Review. Sports Medicine - Open, 2023.
- DOI: https://doi.org/10.1186/s40798-023-00623-2