PHYSIOLOGY · 生理学 EV.5 メタ分析

HIITとMICTでランニングエコノミーに差は出なかった。効き方が分かれたのは「何週やるか」だった

アスリートを対象にHIITとMICTを比べたメタ分析。ランニングエコノミーには両者の差がなかった(P > 0.05)。VO2maxはHIITが短中期で有利だが10週以上では有意差が消え、無酸素性作業閾値は短期のHIIT、ヘモグロビンは短期のMICTで有利という、期間依存の結果になった。

種目 全体 出典 European Journal of Applied Physiology(2024) 読了 約6分 公開 2026年8月3日
A person walking on a treadmill in a modern gym setting, focusing on fitness.
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この研究でわかったこと

  1. 01 ランニングエコノミーの改善についてはHIITとMICTに有意な差がなかった(P > 0.05)。
  2. 02 VO2maxの改善はHIITが短中期で有利だったが、10週以上では有意差が出なかった。無酸素性作業閾値も短期のHIITでのみ有意だった。
  3. 03 ヘモグロビンについては短期のMICTのほうが有利で、種目パラメータごとに有利な側と最適な期間が入れ替わる結果になった。

高強度インターバル(HIIT)と中強度持続(MICT)は、ランニングエコノミーの改善については差がなかった。差が出たのはVO2max・無酸素性作業閾値・換気量・ヘモグロビンで、しかもどちらが有利かは介入期間によって入れ替わる。アスリートを対象とした研究を統合したメタ分析の結果である。


用語について。 HIITは高強度インターバルトレーニング、MICTは中強度持続トレーニングを指す。抄録は両者の具体的な強度・時間の定義を示していないため、この記事でも「高強度で区切って行うか、中強度で続けるか」という区別以上には踏み込まない。「無酸素性作業閾値(anaerobic threshold)」も抄録が定義していない指標名としてそのまま扱う。

1. 何を調べた研究か

HIITとMICTが、アスリートの有酸素持久パフォーマンスの各パラメータに与える効果を系統的に評価し、メタ分析すること。それが著者らの掲げた目的である。

比較の対象になったのは、ランニングエコノミー、VO2max、無酸素性作業閾値、換気量、ヘモグロビンといった生理指標である。レースタイムそのものではない。

2. これまで分かっていたこと

HIITとMICTのどちらが持久系の指標を改善するかという比較は繰り返し行われてきたが、指標ごとに結論が揃っていなかった。著者らがメタ分析に加えてサブグループ解析と回帰分析まで組んでいるのは、単純な優劣ではなく「どの条件で差が出るか」を切り分ける必要があると見たからである。

実際、このメタ分析で差が出た指標はいずれも介入期間で結果が分かれている。

3. どう調べたのか

PubMed、Web of Science、EBSCO、Embase、Cochraneの各データベースを検索した。研究の質はCochraneのバイアスリスク評価ツールで評価している。

解析では異質性の検討とサブグループ解析を行い、さらに回帰分析と感度分析も実施した。プロトコルはPROSPEROに登録されている(CRD42024499039)。

抄録には、組み入れられた研究の数、参加者の総数、対象となった競技とその競技レベルの内訳は記載されていない。

4. HIITとMICTで何が違い、何が違わなかったのか

ランニングエコノミーだけが「差なし」で、残りは期間しだいで有利な側が入れ替わった。

指標有利だった側有意だった期間有意でなかった期間
ランニングエコノミー差なし全体(P > 0.05)
VO2maxHIIT1〜3週、4〜9週10週以上
無酸素性作業閾値HIIT1〜3週4〜10週
換気量HIIT6〜10週3週
ヘモグロビンMICT2〜3週8週

読み取れる形はおおむね二つある。ひとつは、HIITの優位が現れる期間が指標ごとにずれていること。無酸素性作業閾値は1〜3週という早い段階で差が付き、換気量は逆に6〜10週でようやく差が付いている。もうひとつは、VO2maxで10週以上になると群間差が有意でなくなることである。

ヘモグロビンだけはMICT側に有利で、しかも2〜3週という短い期間でのみ有意だった。8週では有意にならなかったと報告されている。

なお著者らが結論としてまとめた期間は、結果の記述とわずかに幅が異なる。結論部ではVO2maxと換気量について6〜9週のHIITがより有効、無酸素性作業閾値については3週のHIITがより有効、ヘモグロビンについては3週以内のMICTがより有効、と整理されている。抄録内でこの差がどう埋められているのかは示されていないため、ここでは結果の記述と結論の両方をそのまま並べておく。

5. HIITのブロックを何週で組むべきか

指標ごとに違う、というのがこの論文の実務的な含意である。単一の最適な長さは示されていない。

VO2maxを狙うなら、この論文が支持しているのは比較的短いブロックである。10週以上まで引き延ばした場合、MICTに対する優位は有意でなくなっていた。ここで注意すべきは、これが「HIITの効果が消える」という意味ではないことだ。示されているのはあくまでMICTとの群間差であって、HIITを続けたときの絶対的な変化ではない。

無酸素性作業閾値を動かしたいなら、差が出ていたのは1〜3週という早い段階である。逆に換気量は6〜10週で差が付いており、短いブロックでは動いていない。同じHIITでも、狙う指標によって必要な長さが違うということになる。

そしてランニングエコノミーについては、この論文は選択の材料を与えていない。HIITとMICTのあいだに差がなかったのだから、ランニングエコノミーを理由にどちらかを選ぶ根拠はここにはない。

トライアスリートが読むときの制約も大きい。対象は「アスリート」とだけ書かれており、種目も競技レベルも抄録からは分からない。三種目を並行してこなす負荷のもとで同じ期間依存性が成り立つかどうかは、この論文の外の問題である。

6. この研究の限界

抄録の情報量そのものが最大の限界である。組み入れ研究数も参加者数も示されておらず、効果量や信頼区間も報告されていない。読めるのはP値による有意・非有意の別だけで、差の大きさが実務上意味のある水準なのかを判断できない。

対象集団も特定できない。「アスリート」という括りのなかに、どの競技のどの水準の選手がどれだけ含まれていたのかが分からない。持久系種目に限られていたのかどうかも抄録からは読み取れない。

サブグループの細かさにも注意がいる。期間で切った各サブグループにどれだけの研究が入っていたのかが示されていないため、「10週以上で有意でなくなった」が本当に効果の減衰なのか、単にその区間の研究が少なかっただけなのかを区別できない。

結果と結論の記述に幅の違いがあることも先に述べたとおりである。VO2maxについて結果部は1〜3週と4〜9週で有意としているのに対し、結論部は6〜9週を挙げている。

7. よくある疑問

結局HIITとMICTのどちらが優れているのか

指標と期間によって入れ替わる、というのがこのメタ分析の答えである。ランニングエコノミーには差がなく(P > 0.05)、VO2maxと換気量はHIIT、短期のヘモグロビンはMICTが有利だった。どちらか一方に置き換えるべきだ、という結論は示されていない。

HIITを10週以上続ける意味はないのか

そうとは言えない。抄録が示しているのは、VO2maxの改善についてHIITがMICTを上回るという群間差が10週以上では有意にならなかったことである。HIITを続けても効果が消えるという意味ではなく、MICTに対する優位が統計的に支持されなくなった、という意味にとどまる。

ランニングエコノミーを上げるには何をすればいいのか

この論文は答えていない。確かめられたのはHIITとMICTのあいだにランニングエコノミー改善の差がなかったこと(P > 0.05)までで、どちらも効かないという意味でも、他の手段が有効だという意味でもない。ランニングエコノミーを狙うなら、この比較の外にある研究を見る必要がある。

8. 出典

  • Wang Z, Wang J. The effects of high-intensity interval training versus moderate-intensity continuous training on athletes’ aerobic endurance performance parameters. European Journal of Applied Physiology, 2024.
  • DOI: https://doi.org/10.1007/s00421-024-05532-0
CITATION The effects of high-intensity interval training versus moderate-intensity continuous training on athletes' aerobic endurance performance parameters(European Journal of Applied Physiology, 2024) doi:10.1007/s00421-024-05532-0 ↗