NUTRITION · 栄養 EV.5 システマティックレビュー

ビーツジュースは最大下の酸素コストを1.5〜5.0%下げる。エリートには数日の継続摂取が要る

ランニング・サイクリング・スイミングを対象に2020〜2025年の文献を整理した系統的レビュー。ビーツジュースは最大下の酸素コストを1.5〜5.0%低下させ、レクリエーションレベルでは疲労困憊までの時間が約15.7%延び、サイクリストのパワー出力は1.2〜3.0%改善した。エリートは高い基礎一酸化窒素値による頭打ちを越えるため3〜7日の継続摂取が必要とされる。

種目 全体 出典 Quality in Sport(2026) 読了 約6分 公開 2026年8月3日
Colorful glasses of beetroot and carrot juice garnished with lemon slices, symbolizing health and freshness.
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この研究でわかったこと

  1. 01 ビーツジュースは最大下運動の酸素コストを1.5〜5.0%低下させる。
  2. 02 レクリエーションレベルのアスリートでは疲労困憊までの時間が約15.7%増加し、サイクリストではパワー出力が1.2〜3.0%改善した。スイミングではストローク効率の向上と乳酸除去の促進が示されている。
  3. 03 エリートは基礎の一酸化窒素値が高いため頭打ち効果が生じ、それを越えるには3〜7日の継続的な摂取が必要とされる。

ビーツジュースは最大下運動の酸素コストを1.5〜5.0%下げる。ランニング・サイクリング・スイミングを対象に2020〜2025年の文献を整理した系統的レビューによれば、レクリエーションレベルでは疲労困憊までの時間が約15.7%延びた一方、エリートでは頭打ち効果を越えるために3〜7日の継続摂取が必要になる。


用語について。 ビーツジュースに含まれる食事性硝酸塩(NO3-)は、硝酸塩→亜硝酸塩(NO2-)→一酸化窒素(NO)という経路で一酸化窒素の利用能を高める。この経路は高強度運動でとくに効果的だとされる。「頭打ち効果(ceiling effect)」は、基礎値が高い場合に上乗せが効きにくくなる現象を指す。

1. 何を調べた研究か

ビーツジュースがランニング・サイクリング・スイミングの持久パフォーマンスに与える影響を評価し、標準化された投与プロトコルを定めること。それが著者らの目的である。

三種目を並べて扱っている点は、トライアスロンの読者にとって使い勝手がよい。ただし種目間で得られている情報の粒度は揃っていない。

2. これまで分かっていたこと

食事性硝酸塩が一酸化窒素の利用能を高め、それが高強度運動でとくに効果的であることは、機序として整理されている。

定まっていなかったのは投与の形である。どれだけの量を、いつから、どれだけの期間摂ればよいのか。著者らが目的に「標準化された投与プロトコルの確立」を掲げているのは、そこが実務上の空白だったからである。

3. どう調べたのか

PubMed、Scopus、Web of Scienceを対象に系統的レビューを実施した。対象期間は2020年から2025年である。

焦点を当てたのは、運動の経済性(VO2)、タイムトライアルの結果、回復指標を評価したメタ分析と無作為化比較試験で、レクリエーションレベルからエリートまでのアスリートが含まれている。

抄録には組み入れられた研究の数、参加者の総数、バイアスリスクの評価方法は記載されていない。

4. ビーツジュースで何がどれだけ変わるのか

効果は種目と鍛錬度によって書き分けられている。

対象アウトカム報告された変化
全体最大下の酸素コスト1.5〜5.0%の低下
レクリエーションレベル疲労困憊までの時間約15.7%の増加
サイクリストパワー出力1.2〜3.0%の改善
スイミングストローク効率・乳酸除去効率の向上と除去の促進
エリート効果を得る条件3〜7日の継続摂取が必要

中心にあるのは最大下の酸素コストの低下である。1.5〜5.0%という幅は、同じペースで走る・漕ぐときの酸素消費が下がることを意味し、持久系種目では素直に有利に働く。

レクリエーションレベルで報告された約15.7%という疲労困憊までの時間の増加は、数字としてはかなり大きい。ただしこの種の指標は変動が大きく、レースタイムの改善幅とは桁が違う点に注意がいる。サイクリストのパワー出力1.2〜3.0%のほうが、競技成績への翻訳としては現実的な大きさである。

スイミングについては、ストローク効率の向上と乳酸除去の促進という定性的な記述にとどまり、対応する数値は示されていない。

エリートに関する記述がこのレビューの実務的な核である。基礎の一酸化窒素値が高いために頭打ち効果が生じ、それを越えるには3〜7日の継続的なローディングが必要だとされている。

5. いつ・どれだけ摂ればいいのか

このレビューが示す最適プロトコルは、1日あたり8 mmolの硝酸塩を3〜7日にわたって摂る継続的な形式である。あわせて、摂取タイミングと口腔内細菌叢の保持に特段の注意を払うべきだとされている。

口腔内細菌叢が挙がるのは、硝酸塩から亜硝酸塩への変換を口腔内の細菌が担っているためである。ただし抄録は「保持すべきだ」と述べるだけで、具体的に何を避けるべきかまでは示していない。

鍛錬度による使い分けも実務に効く。レクリエーションレベルなら効果が出やすいが、鍛錬が進むほど頭打ちに近づく。自分が伸び悩む側にいると感じるなら、単回ではなく数日の継続を前提に計画したほうが、このレビューの整理とは整合する。

トライアスロンでの使い方としては、レース週の数日前から始めて当日まで続ける形が、3〜7日という範囲に収まる。ただしこのレビューは三種目を連続してこなす状況を検証したものではなく、種目ごとの知見を並べたものである。

そして著者らはビーツジュースを安全で妥当性が確認されたエルゴジェニックエイドだと結論づけているが、消化管への影響など個人差のある反応については触れていない。レース本番の前に練習で試す順序は、ここでも変わらない。

6. この研究の限界

最大の限界は、レビューの中身が抄録から追えないことである。組み入れ研究数も参加者数も示されておらず、報告されている数値の幅(1.5〜5.0%、1.2〜3.0%)がどれだけの研究に支えられているのか分からない。

統合の方法も示されていない。メタ分析とRCTの両方を対象にしたと書かれているが、効果量を統合したのか、それぞれの報告値を並べたのかは判別できない。信頼区間もp値も示されていない。

種目間の情報量も揃っていない。ランニングとサイクリングには数値があるのに対し、スイミングは定性的な記述にとどまる。三種目を扱ったレビューではあるが、スイムについての根拠は明らかに薄い。

対象期間も狭い。2020年から2025年に限定されているため、硝酸塩研究の初期に確立した知見は原理的に含まれない。

そして掲載誌の性質上、単独で強い根拠として扱うのは避けたい。示されているプロトコル(1日8 mmol、3〜7日)は他の文献とも大きく矛盾しないが、この論文だけを根拠に決めるより、効果量を報告した個別のメタ分析に当たり直すのが妥当である。

7. よくある疑問

エリート選手には効かないのか

効かないのではなく、効かせ方が違うとされている。基礎の一酸化窒素値が高いために頭打ち効果が生じるため、それを越えるには3〜7日の継続摂取(クロニックローディング)が必要だ、というのがこのレビューの整理である。単回の摂取で済ませられるのはレクリエーションレベルまで、という含意になる。

レース何日前から飲めばいいのか

このレビューが示す最適プロトコルは、1日あたり8 mmolの硝酸塩を3〜7日にわたって摂る継続的な形式である。あわせて摂取タイミングと口腔内細菌叢の保持に注意を向けるべきだとされている。

スイムでも効果があるのか

スイミング固有のデータとして、ストローク効率の向上と乳酸除去の促進が示されている。ただし具体的な数値はランニング(酸素コスト1.5〜5.0%低下)やサイクリング(パワー出力1.2〜3.0%改善)ほど明示されておらず、定性的な記述にとどまる。

8. 出典

  • Kubas W, Sadok A, Białek A, Karczewski J, Niemcewicz WJ, Ryń K, Koźlicka A, Klajda J, Czerniakowski M, Gorczyca Z. The impact of beetroot juice supplementation on performance in endurance sports. Quality in Sport, 2026.
  • DOI: https://doi.org/10.12775/qs.2026.54.69969
CITATION The impact of beetroot juice supplementation on performance in endurance sports(Quality in Sport, 2026) doi:10.12775/qs.2026.54.69969 ↗