NUTRITION · 栄養 EV.5 システマティックレビュー

糖質補給は持久パフォーマンスに有益とされた。ただし効果の大きさは示されていない

ランナーとサイクリストを対象に糖質補給の効果を扱った13件の無作為化比較試験のシステマティックレビュー。糖質摂取は運動セッション間のグリコーゲン貯蔵の回復を助け、強度の維持と刺激を可能にするとされ、持久パフォーマンスに有益な効果を持つと結論づけている。ただし効果量も信頼区間も報告されていない。

種目 全体 出典 Clinical Nutrition ESPEN(2025) 読了 約5分 公開 2026年8月3日

この研究でわかったこと

  1. 01 糖質摂取は運動セッション間のグリコーゲン貯蔵の回復を助け、強度の維持と刺激を可能にするとされている。
  2. 02 糖質補給の使用は持久パフォーマンスに有益な効果を持ち、さまざまな場面で持久系アスリートの運動能力を高める、というのが結論である。
  3. 03 著者らは、持久パフォーマンスを最適化するために複数の要因を考慮した、適切で個別化された補給戦略の重要性を強調している。

糖質補給は持久パフォーマンスに有益な効果を持つ。ランナーとサイクリストを対象にした13件の無作為化比較試験のシステマティックレビューの結論である。ただし効果量は報告されておらず、この論文から読み取れるのは方向性と、個別化の必要性までである。


用語について。 この論文はランナーとサイクリストに対象を絞っている。「エルゴジェニック資源(ergogenic resource)」は運動能力を高める手段を指す。統合は記述的で、効果量の算出は行われていない。

1. 何を調べた研究か

糖質補給が持久パフォーマンスに与える効果を、とくにランナーとサイクリストについて検討すること。それが著者らの目的である。

種目を二つに絞っている点が、この論文の枠組みの特徴になっている。

2. これまで分かっていたこと

糖質はアスリートと身体活動を行う人にとって、利用可能な主要なエルゴジェニック資源のひとつとみなされてきた。

運動の前・中・後の適切な日々の糖質摂取が体内のグリコーゲン貯蔵の維持を確保し、それによって持久パフォーマンスを最適化しうる、という理解が前提に置かれている。この論文はその前提を、無作為化比較試験の統合によって確かめようとしている。

3. どう調べたのか

MEDLINE/PubMed、SCIELO、Web of Science、Scopus、Embaseに収録された学術論文を検索した。

選定基準は四つである。無作為化臨床試験であること(期間の限定なし、言語も問わない)。健康なランナーとサイクリストを対象とし年齢制限を設けないこと。持久系アスリートにおける糖質補給を扱っていること。そして運動前・運動中・運動後のいずれかにおける糖質摂取の効果を示していること。

組み入れられたのは13件の無作為化比較試験である。

4. 何が示されたのか

方向性は明確だが、量は示されていない。

論点内容
グリコーゲン糖質摂取は運動セッション間の貯蔵の回復を助ける
強度強度の維持と刺激を可能にする
パフォーマンス持久パフォーマンスに有益な効果を持つ
運動能力さまざまな場面で持久系アスリートの運動能力を高める
効果量報告なし

抄録の結果部は短く、糖質摂取がセッション間のグリコーゲン貯蔵の回復を助け、強度の維持と刺激を可能にする、と述べている。そこから、糖質補給の使用が持久パフォーマンスに有益な効果を持ち、さまざまな場面で持久系アスリートの運動能力を高める、という結論が導かれている。

結論部で強調されているのは、持久パフォーマンスを最適化するために複数の要因を考慮した、適切で個別化された補給戦略の重要性である。

5. 実務としてどう読むか

「糖質補給は効く」を確認する材料として読み、量やタイミングの設計には使わない。

この論文の結論は、持久系スポーツ栄養の教科書的な理解と一致している。糖質がグリコーゲンを回復させ、それが次のセッションの強度を支えるという筋道は、機序としても実務としても納得しやすい。

問題は精度である。効果量も信頼区間も報告されていないため、「どれくらい効くか」を判断できない。13件の無作為化比較試験を集めながら、結果が定性的な記述にとどまっているのは惜しい。

タイミングについても、組み入れ基準には運動前・中・後のいずれかを扱った研究が含まれているが、それぞれの効果を比較した結果は示されていない。セッション間のグリコーゲン回復に触れている点から、回復局面の重要性が読み取れる程度である。

量に至っては何も示されていない。「個別化された戦略」という結論は方向としては正しいが、何を基準に個別化すればよいかの手がかりがない。

したがって実務的には、糖質と電解質の効果を効果量で示した別のメタ分析や、グリコーゲン超回復の量を実数で報告したメタ分析のほうが、判断材料としては使いやすい。

6. この研究の限界

最大の限界は、統合が記述的であることだ。効果量も信頼区間も算出されておらず、13研究の結果がどう重み付けされたのかも分からない。

対象集団の情報もない。参加者の総数、競技レベル、性別、年齢の分布はいずれも記載されていない。年齢制限を設けていないという基準からは、幅広い層が含まれた可能性がある。

介入条件も示されていない。糖質の種類、量、濃度、摂取のタイミングといった条件が分からないため、この結果を実務に翻訳できない。

バイアスリスクの評価にも言及がない。無作為化臨床試験に限定している点は設計として堅いが、各研究の質がどう判定されたのかは追えない。

そして結論が既知の理解を超えていない。糖質補給が持久パフォーマンスに有益であること自体は広く共有されており、このレビューがそこに何を加えたのかは抄録からは読み取りにくい。

7. よくある疑問

糖質補給はどれくらい効くのか

この論文からは分からない。システマティックレビューであってメタ分析ではないため、効果量も信頼区間も報告されていない。示されているのは「有益な効果を持つ」「運動能力を高める」という方向性までである。

いつ摂ればいいのか

組み入れ基準には運動前・運動中・運動後の糖質摂取の効果を扱った研究が含まれている。ただし結果としてどのタイミングがどれだけ有効かという比較は抄録に示されておらず、セッション間のグリコーゲン回復に触れている点から回復局面の重要性が読み取れる程度である。

量はどう決めればいいのか

この論文は具体的な量を示していない。結論として強調されているのは、複数の要因を考慮した適切で個別化された補給戦略の重要性である。何g/時、何g/kgといった数値はここからは決められない。

8. 出典

  • Dos Santos LC, Costa CM, de Moura RC, Silvino VO, Dos Santos MAP, Brandão ACAS. Effects of carbohydrate supplementation on the performance of endurance athletes: A systematic review. Clinical Nutrition ESPEN, 2025.
  • DOI: https://doi.org/10.1016/j.clnesp.2025.04.021
CITATION Effects of carbohydrate supplementation on the performance of endurance athletes: A systematic review(Clinical Nutrition ESPEN, 2025) doi:10.1016/j.clnesp.2025.04.021 ↗