NUTRITION · 栄養 EV.5 システマティックレビュー

クレアチンとβ-アラニンの併用は高強度で効く。有酸素持久力への上乗せはなかった

クレアチンとβ-アラニンの併用効果を扱った7件の無作為化比較試験263名のシステマティックレビュー。併用は単独摂取と比べて高強度運動、とくに無酸素パワーと反復動作のパフォーマンスを高めた。一方で最大筋力は変わらず、VO2max・乳酸閾値・疲労困憊までの時間といった有酸素能力にも上乗せは認められなかった。

種目 全体 出典 Nutrients(2025) 読了 約5分 公開 2026年8月3日
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この研究でわかったこと

  1. 01 クレアチンとβ-アラニンの併用は、単独摂取と比べて高強度運動のパフォーマンス、とくに無酸素パワーと反復動作のパフォーマンスを高めた。
  2. 02 最大筋力についてはクレアチン単独と比べた上乗せがなかった。体組成への効果は割れており、除脂肪量の増加と脂肪量の減少を報告した研究がある一方、有意な改善を認めなかった研究もある。
  3. 03 有酸素持久能力(VO2max、乳酸閾値、疲労困憊までの時間)については、併用による有意な改善が認められなかった。

クレアチンとβ-アラニンを一緒に摂ると、高強度運動のパフォーマンスは単独摂取より高まる。7件の無作為化比較試験263名を対象にしたシステマティックレビューの結論である。ただし最大筋力への上乗せはなく、VO2maxや乳酸閾値といった有酸素能力にも有意な改善は認められなかった。


用語について。 クレアチンは高強度・短時間の運動で使われるホスホクレアチン系を支える成分、β-アラニンは筋内のカルノシンを増やして酸性化への耐性を高める成分とされる。作用する経路が違うため、併用で相乗効果が出るのではないかというのがこの論文の問いの背景である。

1. 何を調べた研究か

クレアチンとβ-アラニンを組み合わせて摂ったときの、運動パフォーマンスと体組成への効果を整理すること。それが著者らの目的である。

比較の相手が置き方の要である。プラセボではなく、クレアチン単独またはβ-アラニン単独が対照になっている。したがって問われているのは「効くかどうか」ではなく「足す意味があるかどうか」である。

2. これまで分かっていたこと

クレアチンとβ-アラニンがそれぞれ運動パフォーマンスを高め体組成を改善することは、広く使われている二つのサプリメントとして確立している。

分かっていなかったのは併用の相乗効果である。単独で効くものを組み合わせたときに、効果が足し合わさるのか。著者らはそこが知られていないと整理している。

3. どう調べたのか

PubMed/MEDLINE、Scopus、Web of Scienceを対象に、2025年3月までに公表された無作為化比較試験を系統的に検索した。

組み入れ条件は、成人参加者がクレアチンとβ-アラニンを併せて摂取し、クレアチン単独またはβ-アラニン単独と比較していること、期間が4週間以上であること、そして運動パフォーマンスまたは体組成の指標を評価していることである。

研究の質はCochraneのバイアスリスク評価ツールで評価された。基準を満たしたのは7件の無作為化比較試験で、参加者は計263名(男性231名、女性32名)だった。

4. 併用で何が上乗せされるのか

高強度側だけが上乗せされた。

アウトカム併用 vs 単独摂取
高強度運動パフォーマンス(無酸素パワー・反復動作)高まった
最大筋力クレアチン単独と比べて上乗せなし
体組成結果が割れている
有酸素持久能力(VO2max、乳酸閾値、疲労困憊までの時間)有意な改善なし

効果が確認されたのは、無酸素パワーと反復動作のパフォーマンスである。短く強い努力を繰り返す局面ということになる。二つの成分がそれぞれ支える系(ホスホクレアチン系と緩衝能)を考えれば、方向としては筋が通る。

一方、最大筋力については上乗せがなかった。一回の最大挙上のような指標では、併用の利点は現れていない。

体組成の結果は割れている。ある研究は併用のほうが除脂肪量の増加と脂肪量の減少が大きかったと報告し、別の研究では有意な改善がなかった。著者らはこれを「どちらとも言えない(equivocal)」と表現している。

そして有酸素持久能力については、VO2max、乳酸閾値、疲労困憊までの時間のいずれにも有意な改善が観察されていない。

結論として著者らは、併用は高強度運動のパフォーマンスを高めるうえで有効かもしれないが、最大筋力・体組成・有酸素能力の指標については単独摂取を上回る効果はない、と述べている。

5. 持久系アスリートが使う意味はあるか

このレビューが示す答えは、狙う場面によって分かれる。

有酸素能力を目的にするなら、併用の根拠はない。VO2maxも乳酸閾値も疲労困憊までの時間も動いていない。トライアスロンの主要な部分を占める持久的な努力に対して、この組み合わせが上乗せをもたらすという証拠は示されていない。

一方で、レース中の高強度の局面――ドラフティングレースの駆け引き、登坂、ラストスパート――は無酸素パワーと反復動作の領域に入る。そこに限れば、このレビューは併用を支持している。ただしそれが数時間のレースの総合タイムに翻訳されるかどうかは、この論文の射程の外にある。

体重の問題も無視できない。クレアチンは水分保持によって体重が増えることが知られるが、このレビューでは体組成の結果が割れており、その点の判断材料は乏しい。体重あたりの出力が効く種目では、この不確実性は小さくない。

そして比較の相手が単独摂取であることを忘れないほうがよい。「併用に上乗せがない」は「どちらも効かない」ではない。クレアチン単独あるいはβ-アラニン単独の効果は、この解析の外にある別の問題である。

6. この研究の限界

まず規模である。7件の無作為化比較試験、263名という数は、四つの領域(高強度パフォーマンス、最大筋力、体組成、有酸素能力)を評価するには小さい。体組成の所見が「ある研究では」「別の研究では」という水準で語られているのは、その現れである。

性別の偏りも大きい。263名のうち女性は32名にとどまる。女性について何かを言い切れる人数ではない。

統合が記述的である点も押さえておきたい。システマティックレビューであってメタ分析ではないため、効果量も信頼区間も算出されていない。「高めた」「上乗せがなかった」という判断がどれだけの大きさの差にもとづくのかを確かめられない。

用量とタイミングの情報もない。クレアチンとβ-アラニンをそれぞれどれだけ、どのように摂ったのかは抄録に示されていない。

そして参加者の競技レベルと種目も分からない。高強度パフォーマンスへの効果が、持久系アスリートで検証されたのかどうかは読み取れない。

7. よくある疑問

持久系種目で併用する意味はあるのか

有酸素能力を狙うなら、このレビューは支持していない。VO2max、乳酸閾値、疲労困憊までの時間のいずれについても、併用による有意な改善は認められていない。効果が示されたのは高強度運動、とくに無酸素パワーと反復動作のパフォーマンスである。

最大筋力は上がるのか

上がらなかった。クレアチンとβ-アラニンの併用摂取は、クレアチン単独と比べて最大筋力の指標を高めなかったと報告されている。併用の利点は最大筋力ではなく、高強度の反復に現れている。

体組成は変わるのか

結果が一定していない。ある研究は単独摂取と比べて除脂肪量の増加と脂肪量の減少が大きかったと報告した一方、別の研究では有意な改善が見られなかった。著者らはこれを equivocal(どちらとも言えない)と表現している。

8. 出典

  • Ashtary-Larky D, Candow DG, Forbes SC, Hajizadeh L, Antonio J, Suzuki K. Effects of Creatine and β-Alanine Co-Supplementation on Exercise Performance and Body Composition: A Systematic Review. Nutrients, 2025.
  • DOI: https://doi.org/10.3390/nu17132074
CITATION Effects of Creatine and β-Alanine Co-Supplementation on Exercise Performance and Body Composition: A Systematic Review(Nutrients, 2025) doi:10.3390/nu17132074 ↗