NUTRITION · 栄養 EV.5 システマティックレビュー

ケトジェニックもケトンサプリも、持久系ランナーの有酸素能力を動かさなかった

持久系ランナーを対象に、ケトジェニックダイエットとケトンサプリメントの有酸素能力への効果を扱ったシステマティックレビュー。ケトジェニック5研究とケトンサプリ7研究、計132名のいずれも、VO2max・レースタイム・疲労困憊までの時間・主観的運動強度で対照を上回る利益を報告していない。体重と体脂肪の減少は一部で報告された。

種目 ラン 出典 Sports Health(2025) 読了 約6分 公開 2026年8月3日
Runner's legs on a road during a sunset, symbolizing endurance and outdoor fitness training.
Photo by Alex Kinkate on Pexels

この研究でわかったこと

  1. 01 研究デザインとプロトコルの異質性はあるものの、ケトジェニックダイエットにもケトンサプリメントにも、選ばれた有酸素能力の指標において対照を上回る利益を報告した研究はなかった。
  2. 02 一方、ケトジェニックダイエットを扱った一部の研究では、除脂肪量を保ちながらの体重・体脂肪の減少と血糖コントロールの改善が報告されている。
  3. 03 著者らはこのレビューで有意な利点も欠点も特定できなかったとし、より大きな標本、性別バランスの取れた参加者、より長期のケトジェニック介入、代謝の健康への追跡を伴う試験が必要だと述べている。

ケトジェニックダイエットもケトンサプリメントも、持久系ランナーの有酸素能力を動かさなかった。ケトジェニック5研究とケトンサプリ7研究、計132名を対象にしたシステマティックレビューの結論である。有意な利点も欠点も特定されず、一部の研究で体重と体脂肪の減少が報告されるにとどまった。


用語について。 「ケトジェニックダイエット」はこの論文では脂質60%超・糖質10%未満(または1日50g未満)の食事として定義されている。「ケトンサプリメント」にはケトンエステル、ケトン塩、中鎖脂肪酸、1,3-ブタンジオールが含まれる。両者は摂り方も機序も異なるが、体内のケトン体を高めるという狙いを共有する。

1. 何を調べた研究か

ケトジェニックダイエットまたはケトンサプリメントが、持久系ランナーの有酸素能力に与える効果を評価すること。それが著者らの目的である。

主要アウトカムは有酸素能力の指標、すなわちVO2max、レースタイム、疲労困憊までの時間、主観的運動強度である。

2. これまで分かっていたこと

ケトジェニックダイエットとケトンサプリメントが持久系ランナーのあいだで人気を集めていることは、著者らも前提に置いている。

その根拠として掲げられてきたのが、長時間のランニング中に体内の脂質貯蔵や外部からのケトン体をより多く利用できるようにすることで、疲労の発現を遅らせられるかもしれない、という想定である。この想定が実際に有酸素能力の改善として現れるのかが、確かめるべき点だった。

3. どう調べたのか

PubMed、Web of Science、ProQuest、ScienceDirectを対象に、2023年10月までに公表された論文を系統的に検索した。

成人の持久系ランナーにおけるケトジェニックダイエットまたはケトンサプリメントの有酸素能力への効果を扱ったヒト研究を、二名のレビュアーが独立にスクリーニングして組み入れている。

VO2maxは漸増負荷による疲労困憊テストで評価され、持久パフォーマンスはタイムトライアル、180分間のランニング試験、または疲労困憊までの走行試験で評価された。最終的にケトジェニックダイエットを扱った5研究とケトンサプリメントを扱った7研究、計132名の持久系ランナーが組み入れられている。

4. ケトは持久系ランナーに効くのか

効かなかった。ただし害も見つかっていない。

対象研究数有酸素能力への効果
ケトジェニックダイエット5研究対照を上回る利益の報告なし
ケトンサプリメント7研究対照を上回る利益の報告なし
ケトジェニックダイエット(副次的な所見)一部の研究除脂肪量を保ちながらの体重・体脂肪減少、血糖コントロールの改善

抄録の言い方は明快である。研究デザインとプロトコルに異質性があるにもかかわらず、選ばれた有酸素能力の指標について対照と比べた利益を報告した研究はひとつもなかった。

一方で、ケトジェニックダイエットを扱った一部の研究では、除脂肪量を保ちながらの体重と体脂肪の減少、そして血糖コントロールの改善が報告されている。これらは主要アウトカムではないが、記述として残されている。

結論として著者らは、このレビューが持久系ランナーの有酸素能力に対するケトジェニックダイエットやケトンサプリメントの有意な利点も欠点も特定しなかった、と述べている。

5. 「体重は落ちるが速くはならない」をどう扱うか

持久系ランナーにとって、この二つは同じ天秤に載る。

体重が落ちて有酸素能力が変わらないなら、体重あたりの出力という観点では有利になりそうに見える。ところがこのレビューでは、レースタイムや疲労困憊までの時間といったパフォーマンス指標も動いていない。体組成の変化がパフォーマンスに翻訳されなかった、という構図である。

そこで判断すべきは、糖質を大きく減らすことのコストのほうになる。抄録は不利益も特定していないが、それは「調べた指標において不利益がなかった」という意味であって、高強度の走りやレース中の補給戦略への影響まで検証したわけではない。

ケトンサプリメントについても同じ結論が出ている点は押さえておきたい。食事を変えずにケトン体だけを外から入れる方法でも、有酸素能力の指標は動かなかった。

そして「効かないが害もない」という結果は、判断の材料としては弱い。試すかどうかは、この論文が扱っていない要素——実行のしやすさ、練習の質への影響、日常生活との相性——で決まることになる。

6. この研究の限界

まず規模である。合わせて132名、ケトジェニックは5研究、ケトンサプリは7研究にとどまる。著者ら自身が、より大きな標本での試験が必要だと述べている。

性別の偏りも指摘されている。より性別バランスの取れた参加者が必要だという記述から、既存研究が男性に偏っていることがうかがえる。ただし具体的な内訳は抄録に示されていない。

介入期間も足りていない。著者らはより長期のケトジェニック介入が必要だとしている。脂質適応には数週間から数か月を要するという議論があるなかで、既存研究の期間が短い可能性がある。

このレビュー自体のエビデンス水準も、著者らによってレベル3と表示されている。組み入れられた研究の設計上、最も高い水準ではないという自己申告である。

そして統合が記述的である点も押さえておきたい。メタ分析ではないため効果量は算出されておらず、「利益の報告なし」がどの程度の精度で言われているのかは確かめられない。

7. よくある疑問

ケトジェニックダイエットで速く走れるようになるのか

このレビューの範囲ではならない。VO2max、レースタイム、疲労困憊までの時間、主観的運動強度という指標について、対照を上回る利益を報告した研究はひとつもなかった。同時に、有意な欠点も特定されていない。

減量目的なら使えるのか

ケトジェニックダイエットを扱った一部の研究では、除脂肪量を保ちながらの体重と体脂肪の減少、そして血糖コントロールの改善が報告されている。ただしこれは主要アウトカムではなく一部の研究の所見であり、体重管理の手段としてこのレビューが推奨しているわけではない。

ケトンサプリメントはどうなのか

ケトンサプリメント(ケトンエステル、ケトン塩、中鎖脂肪酸、1,3-ブタンジオール)を扱った7研究についても、有酸素能力の指標で対照を上回る利益は報告されていない。ケトジェニックダイエットと同じ結論である。

8. 出典

  • Sun K, Choi YT, Yu CCW, Nelson EAS, Goh J, Dai S, Hui LL. The Effects of Ketogenic Diets and Ketone Supplements on the Aerobic Performance of Endurance Runners: A Systematic Review. Sports Health, 2025.
  • DOI: https://doi.org/10.1177/19417381241271547
CITATION The Effects of Ketogenic Diets and Ketone Supplements on the Aerobic Performance of Endurance Runners: A Systematic Review(Sports Health, 2025) doi:10.1177/19417381241271547 ↗