一酸化窒素の利用能を高めるとされる食品の効果は、ごくわずかだった。ポリフェノール59研究と硝酸塩56研究を含む大規模なメタ分析では、硝酸塩とポリフェノールにいずれも有意だが小さい利益が示され、L-シトルリンには効果がなかった。しかも女性では効果が見られず、よく鍛錬された男性では硝酸塩が効いていない。
用語について。 食事性の硝酸塩、L-アルギニン、L-シトルリン、ポリフェノールは、いずれも一酸化窒素の利用能を高めうる成分として扱われる。この論文は「サプリメント」ではなく「食品由来」の摂取に対象を絞っている点が特徴である。効果量の評価語として著者らは「ごくわずか(trivial)」と「小さい(small)」を使い分けている。
1. 何を調べた研究か
一酸化窒素の利用能を高めうる化合物を含む食品の摂取が、持久運動パフォーマンスに与える効果を評価すること。それが著者らの目的である。
対象成分は硝酸塩、L-アルギニン、L-シトルリン、ポリフェノールの四つ。食品別、性別、フィットネス水準別、テスト種類別、補給プロトコル別のサブグループ解析が組み込まれている。
2. これまで分かっていたこと
一酸化窒素の利用能を高めることが、持久運動パフォーマンスを高める生理的効果をもたらしうる、という想定は共有されていた。
ただし個別の研究は成分も食品も対象もばらばらで、どの食品が誰にどれだけ効くのかが定まっていなかった。この論文はサブグループ解析を厚く組むことで、その切り分けに挑んでいる。
3. どう調べたのか
Scopus、Web of Science、Ovid Medline、EMBASE、SportDiscusを検索した。組み入れたのは、硝酸塩、L-アルギニン、L-シトルリン、またはポリフェノールを含む食品の摂取後に持久パフォーマンスを評価した研究である。
統合には変量効果モデルを用い、食品の種類、性別、フィットネス水準、パフォーマンステストの種類、補給プロトコル(期間など)にもとづくサブグループ解析を行った。
メタ分析に含まれた研究の内訳は、ポリフェノール59研究、硝酸塩56研究、L-シトルリン3研究である。プロトコルはOpen Science Frameworkに登録されており、資金提供は受けていない。
4. 誰に、どの食品が効いたのか
全体としては小さく、条件によっては消える。
| 成分 | 効果量(SMD) | p値 | 評価 |
|---|---|---|---|
| 硝酸塩 | 0.15 | < 0.001 | ごくわずかだが有意 |
| ポリフェノール | 0.17 | < 0.001 | ごくわずかだが有意 |
| L-シトルリン | -0.03 | 0.24 | 効果なし |
効果はタイムトライアル、疲労困憊までの時間、断続的なテストのいずれでも見られ、急性摂取でも複数日の摂取でも確認された。
ただしサブグループで景色が変わる。女性では硝酸塩にもポリフェノールにも効果が見られなかった。そしてよく鍛錬された男性(VO2max 65 ml/kg/分以上)は、ポリフェノールでは小さいながら有意な利益を示したのに対し、硝酸塩では示さなかった。
食品別の内訳も具体的である。硝酸塩を豊富に含む食品ではビーツに有益な効果が見られた一方、赤ホウレンソウ、スイスチャードとルバーブには見られなかった。ポリフェノールを豊富に含む食品ではブドウ、硝酸塩を除去したビーツ、フランス海岸松、モンモランシーチェリー、ザクロに利益があり、ニュージーランド産カシス、カカオ、朝鮮人参、緑茶、レーズンには有意な効果がなかった。
ポリフェノール研究間の相当な異質性については、食品固有の効果、あるいは研究デザインと被験者特性の違いを反映している可能性が指摘されている。
5. 何を選び、誰が使うべきか
鍛錬度によって選ぶものが変わる。この解析はその指針を出している。
よく鍛錬された男性については結論が明快である。硝酸塩を豊富に含む食品からは恩恵を受けないように見えるが、ポリフェノールからは受けるかもしれない。ビーツジュースを常用している競技者にとって、これは方向転換を促す所見である。
同じ「ビーツ」でも扱いが分かれる点も興味深い。硝酸塩源としてのビーツには効果があり、硝酸塩を除去したビーツにもポリフェノール源として効果があった。二つの経路が別々に働いている可能性を示唆する。
食品を選ぶ際の材料としては、効果が確認されたもの(ブドウ、モンモランシーチェリー、ザクロ、フランス海岸松)と、されなかったもの(カカオ、緑茶、朝鮮人参、レーズン、ニュージーランド産カシス)の対比が使える。ただし「有意でなかった」は「効かない」と同じではなく、研究数の少なさによる可能性も残る。
女性については判断を保留するのが妥当である。効果が見られなかったという結果はあるが、著者ら自身がそれを生理学的な差によるものか標本サイズの制約によるものか今後評価すべきだとしている。
そして全体の効果量が「ごくわずか」である点は、常に念頭に置いておきたい。SMD 0.15や0.17という値は、体感できる差として現れるとは限らない。
6. この研究の限界
まず効果量の小ささである。統計的に有意でも、著者ら自身が「ごくわずか」と評価している大きさにとどまる。これだけの研究数を集めたからこそ小さな効果が有意になった、という側面もある。
異質性も大きい。とくにポリフェノール研究間の異質性は相当なもので、食品固有の効果か研究デザインの違いかが切り分けられていない。
サブグループの研究数も不均衡である。L-シトルリンはわずか3研究で、効果がなかったという結論を支えるには薄い。食品別の解析も、それぞれ何研究にもとづくのかが抄録に示されていない。
参加者数も分からない。組み入れられた研究に含まれた総数、性別構成の詳細は記載されていない。女性で効果が見られなかったという所見の背後にどれだけのデータがあるのかを確かめられない。
用量と期間についても、著者らが今後の研究課題として挙げている。ポリフェノールのエルゴジェニックな反応を最適化するための食品源、用量、補給期間についてさらなる研究が必要だ、とされている。
そして公表年が古い部類に入る。以降に蓄積された研究は含まれていない。
7. よくある疑問
鍛錬した選手にビーツジュースは効くのか
この解析では、よく鍛錬された男性(VO2max 65 ml/kg/分以上)は硝酸塩の摂取から利益を得ていない。著者らも結論で、高度に鍛錬された持久系アスリートは硝酸塩を豊富に含む食品の摂取から恩恵を受けないように見える、と述べている。一方でポリフェノールについては小さいながら有意な利益を示した。
女性には効かないのか
この解析では女性において硝酸塩にもポリフェノールにも効果が見られなかった。ただし著者ら自身が、性別による反応の違いが生理学的な差によるものか標本サイズの制約によるものかを今後の研究で評価すべきだとしている。効かないと確定したわけではない。
どの食品を選べばいいのか
食品によって結果が分かれている。硝酸塩ではビーツに効果があり、赤ホウレンソウ・スイスチャード・ルバーブにはなかった。ポリフェノールではブドウ、硝酸塩を除去したビーツ、フランス海岸松、モンモランシーチェリー、ザクロに利益があり、ニュージーランド産カシス、カカオ、朝鮮人参、緑茶、レーズンには有意な効果がなかった。
8. 出典
- d’Unienville NMA, Blake HT, Coates AM, Hill AM, Nelson MJ, Buckley JD. Effect of food sources of nitrate, polyphenols, L-arginine and L-citrulline on endurance exercise performance: a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. Journal of the International Society of Sports Nutrition, 2021.
- DOI: https://doi.org/10.1186/s12970-021-00472-y