NUTRITION · 栄養 EV.5 システマティックレビュー

オメガ3は炎症と筋痛を下げた。ただし筋力の回復とパフォーマンスは一定しなかった

アスリートへのオメガ3脂肪酸補給を扱った10件の無作為化比較試験256名のシステマティックレビュー。炎症マーカー(IL-1β、IL-6、TNF-α)と筋損傷指標(CK、LDH-5)の低下、肺機能と心血管系指標の改善が観察された一方、運動パフォーマンスと筋力回復への効果は研究間で一貫しなかった。

種目 全体 出典 Journal of Food Science and Nutrition Research(2025) 読了 約5分 公開 2026年8月3日
Fish oil capsules and packaging on ice, highlighting Omega 3 benefits for health.
Photo by Hoàng Ngọc Long on Pexels

この研究でわかったこと

  1. 01 オメガ3補給は炎症マーカー(IL-1β、IL-6、TNF-α)の低下、筋損傷指標(CK、LDH-5)の低下、そして肺機能と心血管系指標(ランニングエコノミーとVO2maxを含む)の改善と関連していた。
  2. 02 一方、運動パフォーマンスと筋力回復への効果は研究間で一貫せず、主観的な回復感と筋痛には利点が見られても客観的な筋力の回復には現れないことが多かった。とくにエリート選手でその傾向があった。
  3. 03 著者らは、有益な効果は主としてアマチュアアスリートで見られ、全体のパフォーマンスと筋力回復への影響は補給プロトコル・研究デザイン・対象集団の異質性のため結論が出ないとしている。

オメガ3脂肪酸の補給は、炎症マーカーと筋損傷指標を下げ、肺機能と心血管系の指標を改善した。10件の無作為化比較試験256名のシステマティックレビューの結論である。ただし運動パフォーマンスと筋力回復への効果は一貫せず、主観的な回復感は良くなっても客観的な筋力は戻らない、という報告が多かった。


用語について。 オメガ3脂肪酸のうちこのレビューが焦点を当てるのはEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)である。「CK」はクレアチンキナーゼ、「LDH-5」は乳酸脱水素酵素のアイソザイムで、いずれも筋の損傷に伴って血中に増える指標として扱われる。

1. 何を調べた研究か

アスリートにおけるオメガ3脂肪酸補給の効果を系統的にレビューすること。焦点は運動パフォーマンス、筋の回復、炎症、および関連する生理的適応に置かれている。

背景には、スポーツ参加が世界的に増え、それに伴ってスポーツ関連の筋骨格系傷害も増えているという認識がある。

2. これまで分かっていたこと

オメガ3脂肪酸、とくにEPAとDHAが炎症を抑え、関節の健康を支え、筋の回復を促すことで傷害リスクを下げうる、という提案は既になされていた。

しかし競技パフォーマンスと回復におけるオメガ3補給の有効性は依然として不明確だ、というのが著者らの出発点である。機序として妥当でも、実際のアウトカムに現れるかは別の問題だった。

3. どう調べたのか

PRISMAガイドラインに沿って、PubMed/MEDLINEを用いたシステマティックレビューを実施した。対象はアスリートにおけるオメガ3補給(1日4g以下)を検討した研究である。

バイアスリスクはCochrane RoB 2.0ツールで評価し、エビデンスの確実性はGRADEフレームワークで評価している。

組み入れられたのは10件の無作為化比較試験、アスリート計256名(18.6〜36.0歳)だった。

4. 何が下がり、何が変わらなかったのか

生化学的な指標は動き、パフォーマンスは動かなかった。

領域所見
炎症マーカーIL-1β、IL-6、TNF-α の低下
筋損傷指標CK、LDH-5 の低下
肺機能・心血管系改善(ランニングエコノミーとVO2maxを含む)
主観的な回復感・筋痛利点が見られることが多い
客観的な筋力回復現れないことが多い(とくにエリート選手)
運動パフォーマンス研究間で一貫しない

この表の下三行が、このレビューの核心である。主観的には楽になるが、客観的な出力は戻っていない。両者が食い違うという所見は、回復の評価をどこで行うかという問題を突きつける。

炎症マーカーと筋損傷指標の低下は一貫している。ただしこれらは中間指標であり、それ自体がパフォーマンスや傷害の減少を意味するわけではない。

著者らの結論は、オメガ3補給、とくにEPAとDHAが炎症・筋痛・心血管および肺の適応に有益な効果を示すが、それは主としてアマチュアアスリートにおいてである、というものである。そして全体のパフォーマンスと筋力回復への影響は、補給プロトコル・研究デザイン・対象集団の異質性のため結論が出ない、としている。

5. 補給を続ける意味はあるか

炎症と筋痛を目的にするなら支持される。速くなることを目的にするなら支持されない。

主観と客観の食い違いは、実務ではむしろ危険を含む。筋痛が軽く感じられるからといって筋力が戻っているとは限らない、という所見は、翌日の練習強度を決めるときに効いてくる。感覚を根拠に強度を上げると、回復していない状態で負荷をかけることになる。

対象による違いも押さえておきたい。効果が主としてアマチュアで見られたという記述は、鍛錬が進むほど上乗せが得にくいことを示唆する。すでに練習量が多く、食事も整っている人ほど、追加の効果は小さくなる可能性がある。

ランニングエコノミーとVO2maxの改善が心血管・肺の適応として挙げられている点は興味深いが、これらは運動パフォーマンスのアウトカムとは別に扱われている。パフォーマンスが一貫しなかったという結論と並べて読む必要がある。

用量については、組み入れ基準が1日4g以下という上限だけで、最適量は示されていない。著者ら自身が今後の課題として用量戦略の最適化を挙げている。

6. この研究の限界

まず検索がPubMed/MEDLINE単独である。網羅性には明らかな制約がある。

規模も小さい。10件の無作為化比較試験、計256名という数は、複数のアウトカムに分けて評価するには限られている。

統合が記述的である点も押さえておきたい。システマティックレビューであってメタ分析ではないため、効果量も信頼区間も示されていない。「低下した」「一貫しない」という判断の背後にある大きさが分からない。

異質性は著者ら自身が結論を保留する理由に挙げている。補給プロトコル、研究デザイン、対象集団のばらつきが大きく、統合された判断ができない状態である。

そして年齢範囲が18.6〜36.0歳と若年に偏っている。マスターズ世代への一般化はできない。

7. よくある疑問

オメガ3で速くなるのか

このレビューでは結論が出ていない。運動パフォーマンスと筋力回復への効果は研究間で一貫せず、著者らは補給プロトコル、研究デザイン、対象集団の異質性を理由に結論は未定だと述べている。改善が観察されたのは炎症・筋損傷の指標と、肺機能や心血管系の指標のほうである。

筋肉痛が軽くなるだけで、回復自体は早くならないのか

その区別がこのレビューの重要な所見である。主観的な回復感と筋痛には利点が示される一方、客観的な筋力の回復には現れないことが多く、とくにエリート選手でその傾向があったと記述されている。楽に感じることと、出力が戻っていることは別に扱う必要がある。

誰に効きやすいのか

著者らは、有益な効果が主としてアマチュアアスリートで見られたとしている。エリート選手では客観的な筋力の回復に効果が現れにくいと記されており、鍛錬度が上がるほど上乗せが得にくい構図が示唆されている。ただし反応する人を特定することは今後の課題として残されている。

8. 出典

  • Vasios IS, Makiev KG, Gkoudina A, Georgoulas P, Iliopoulos E, Tilkeridis K, Ververidis A. Enhancing Athletes’ Health and Performance: A Systematic Review of Omega-3 Fatty Acid Supplementation. Journal of Food Science and Nutrition Research, 2025.
  • DOI: https://doi.org/10.26502/jfsnr.2642-110000183
CITATION Enhancing Athletes' Health and Performance: A Systematic Review of Omega-3 Fatty Acid Supplementation(Journal of Food Science and Nutrition Research, 2025) doi:10.26502/jfsnr.2642-110000183 ↗