プロテインサプリメントは持久パフォーマンスと筋力を改善する方向の結果を示した。ただし有意だった結果はすべて、介入群と対照群のエネルギー摂取量が揃っていない試験から得られている。アスリート1,206名・75研究をベイズ階層モデルで統合したメタ分析の、これが最も重要な留保である。
用語について。 「ベイズ階層モデル」は、研究ごとのばらつきを織り込みながら効果を推定する統計手法である。ここで報告されるμ(SMD)は標準化平均差の推定値、続く区間は95%信頼区間として示されている。「エネルギー摂取量が揃っている(energy-matched)」は、介入群と対照群の総摂取カロリーを同じにそろえた設計を指す。
1. 何を調べた研究か
プロテインサプリメントが競技パフォーマンスと運動後のリカバリーに与える効果を、無作為化比較試験の統合によって推定すること。それが著者らの目的である。
さらに、たんぱく質の供給源、摂取タイミング、最適な用量といった要因の影響を明らかにする必要があるという問題意識が置かれている。
2. これまで分かっていたこと
プロテインサプリメントがフィットネス愛好者やアスリートに広く使われている一方、その効果について決定的な結論を出した研究は限られている、というのが著者らの整理である。
供給源・タイミング・用量という三つの要因についてはさらなる検討が必要とされており、この論文はそこに調整因子の解析で応えようとしている。
3. どう調べたのか
七つのデータベースを横断的に検索して6,129件の研究を特定し、Covidenceを使ってスクリーニングした。二名のレビュアーが独立に選定・データ抽出・バイアスリスク評価を行い、最終的に75研究、アスリート計1,206名がメタ分析に組み入れられている。
統合はbrmsパッケージによるベイズ階層モデルを用いた多層メタ分析として行われた。出版バイアスはPublicationBiasパッケージで生成したファンネルプロットと、metaforパッケージによるEggerの検定のP値で評価している。さらにbrmsを用いた調整分析で、七つの調整因子と効果量の関係を検討した。
プロトコルはPROSPEROに登録されている(登録番号CRD42024608194)。
4. プロテインは本当に効いているのか
効果は出ている。ただしその効果がたんぱく質によるものかどうかが、この論文の焦点である。
| 比較 | アウトカム | μ(SMD) | 95%信頼区間 |
|---|---|---|---|
| プロテイン+糖質 vs プラセボ | 持久パフォーマンス | 0.57 | 0.2 〜 0.93 |
| プロテイン単独 vs プラセボ | 持久パフォーマンス | 0.37 | 0.02 〜 0.71 |
| プロテイン単独 vs プラセボ | 筋力 | 0.72 | 0.18 〜 1.27 |
| プロテイン単独 vs 糖質サプリメント | グリコーゲン再合成の維持 | 0.83 | 0.21 〜 1.46 |
数字だけを見れば、いずれもプロテイン側に有利である。効果量も小さくない。
ところが著者らは、これらの有意な効果がすべて、介入群と対照群のエネルギー摂取量が揃えられていない無作為化比較試験で観察されたものだと明記している。つまりプロテインを追加した群は、たんぱく質だけでなく総エネルギーも多く摂っていた可能性が高い。
結論部の言い方はさらに踏み込んでいる。プロテイン補給の効果は限定的に見える。プロテインサプリメントは「補給しない場合」と比べれば有益な効果を示した。しかし統計的に有意な結果はすべてエネルギー摂取量が揃っていない研究に由来しており、観察された利点はたんぱく質そのものに帰せられないかもしれない――そう書かれている。
5. 実務としてどう摂ればいいのか
用量の目安はひとつ示されている。ただし、その位置づけには注意がいる。
抄録が挙げているのは、サプリメントからのたんぱく質を1日あたり1 g/kg追加し、結果として1日の総たんぱく質摂取量をおよそ2 g/kgにすることが、競技パフォーマンスの向上には最も効果的に見える、という記述である。
この数字は使い勝手がよいが、無作為化して用量を比較した結果ではなく、調整分析から導かれた付随的な所見である。「この量が最適だと証明された」ではなく「この量のあたりで効果が大きく見えた」に近い。
そしてエネルギーの問題が残る。有意な効果がエネルギー未調整の試験に集中しているという所見は、実務的にはむしろ素直に読める。トレーニング量が多い時期に食が細ってエネルギーが不足しているなら、プロテインを足すことは総エネルギーとたんぱく質の両方を底上げする。その状況で効果が出ることは不思議ではない。逆に、すでに十分に食べている状態でプロテインだけを上乗せしても、この論文が示した効果がそのまま出るとは限らない。
リカバリーについても比較の相手を間違えないほうがよい。プロテイン単独が上回ったのは糖質サプリメントとの比較におけるグリコーゲン再合成の維持であって、糖質を摂らなくてよいという話ではない。
6. この研究の限界
最大の限界は著者らが自ら結論に書いている。有意な結果がすべてエネルギー未調整の試験から得られているため、効果の帰属が確定できない。
対象集団の内訳も見えない。1,206名の競技種目、競技レベル、性別、年齢の分布はいずれも抄録に記載がない。持久系アスリートに限った解析ではないため、筋力の結果などは種目構成に左右されうる。
用量の推奨も間接的である。1 g/kg追加・総量およそ2 g/kgという目安は調整分析に由来し、この用量を直接比較した試験の結果ではない。
そして供給源とタイミングについては、問題意識として掲げられているにもかかわらず、抄録に結果が示されていない。七つの調整因子が検討されたと書かれているが、どの因子がどう効いたのかは読み取れない。
7. よくある疑問
プロテインを飲めば持久パフォーマンスは上がるのか
上がる方向の結果は出ているが、解釈に留保がつく。プロテイン+糖質でSMD 0.57(95%信頼区間 0.2〜0.93)、プロテイン単独でSMD 0.37(0.02〜0.71)といずれもプラセボを上回った。ただし著者らは、有意だった結果がすべてエネルギー摂取量を揃えていない試験由来であることから、利点がたんぱく質そのものによるとは限らないと述べている。
結局どれくらい摂ればいいのか
抄録が示している目安は、サプリメントからのたんぱく質を1日あたり1 g/kg追加し、1日の総摂取量をおよそ2 g/kgにすることが、競技パフォーマンスの向上には最も効果的に見える、というものである。ただしこれはメタ分析の付随的な所見であり、無作為化して比較した用量ではない。
糖質と一緒に摂るべきなのか
この解析でプラセボ比の効果量が最も大きかったのはプロテイン+糖質(SMD 0.57)だった。一方、運動後のグリコーゲン再合成の維持については、プロテイン単独が糖質サプリメントを上回っている(SMD 0.83、95%信頼区間 0.21〜1.46)。目的によって比較の相手が変わる点に注意がいる。
8. 出典
- Zhao S, Zhang X, Liang T, Ng S, Liu Y, Ning Z. The effectiveness of protein supplements on athletic performance and post-exercise recovery − a Bayesian multilevel meta-analysis of randomized controlled trials. Journal of the International Society of Sports Nutrition, 2025.
- DOI: https://doi.org/10.1080/15502783.2025.2605338