NUTRITION · 栄養 EV.5 メタ分析

スピルリナやクロレラは疲労困憊までの時間を延ばした。タイムトライアルは動かなかった

藻類由来サプリメントの効果を22件の無作為化比較試験822名で統合したメタ分析。疲労困憊までの時間が有意に改善し(SMD 1.06)、最大パワー出力も小さく改善した(0.29)。一方でタイムトライアルには有意な利益がなく(-0.27)、VO2maxは示唆的にとどまった。クレアチンキナーゼは有意に低下した(-0.78)。

種目 全体 出典 Nutrients(2026) 読了 約6分 公開 2026年8月3日
A mix of capsules, pills, and powder on green background with spoon.
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この研究でわかったこと

  1. 01 疲労困憊までの時間が有意に改善した(SMD = 1.06、95%信頼区間 0.16〜1.96)。最大パワー出力の改善は小さかった(SMD = 0.29、95%信頼区間 0.03〜0.55)。
  2. 02 VO2maxは示唆的な改善にとどまり(SMD = 0.88、95%信頼区間 0.00〜1.75)、タイムトライアルには有意な利益がなかった(SMD = -0.27、95%信頼区間 -0.74〜0.21)。
  3. 03 回復についてはクレアチンキナーゼ濃度が有意に低下した(SMD = -0.78、95%信頼区間 -1.28〜-0.28)。サブグループ解析ではクロレラ、高用量、有酸素トレーニングの文脈で効果が大きかった。

藻類由来のサプリメントは、疲労困憊までの時間を延ばし、運動による筋損傷のマーカーを下げた。22件の無作為化比較試験822名を統合したメタ分析の結論である。一方でタイムトライアルのパフォーマンスは動かず、効果は種類・用量・トレーニング様式に依存するとされている。


用語について。 この解析が扱う「藻類由来サプリメント」には、スピルリナ、クロレラ、褐藻多糖、アスタキサンチンが含まれる。「TTE(疲労困憊までの時間)」は決まった強度をどれだけ続けられるかを、「TT(タイムトライアル)」は決まった距離をどれだけ速く終えられるかを測る指標で、性質が異なる。

1. 何を調べた研究か

藻類由来のサプリメント補給が、健康な成人およびアスリートの運動パフォーマンスと生理的な回復のアウトカムに与える効果を評価すること。それが著者らの目的である。

主要アウトカムはVO2max、疲労困憊までの時間、最大パワー出力、タイムトライアルのパフォーマンス、そしてクレアチンキナーゼの五つに置かれている。

2. これまで分かっていたこと

海藻と微細藻類が抗酸化物質、多価不飽和脂肪酸、生理活性化合物を供給し、それが運動パフォーマンスを高め回復を早めうる、という想定は示されていた。

しかし証拠は一貫していない、というのが著者らの整理である。成分としての機序は説明できても、実際のアウトカムに現れるかどうかで報告が割れていた。

3. どう調べたのか

PROSPEROに登録(CRD420251166723)したうえで、PRISMA 2020ガイドラインに沿って実施された。

PubMed、Web of Science、Embase、Cochrane Library、EBSCO、CNKIを対象に、運動の文脈で藻類補給を評価した無作為化比較試験を系統的に検索している。組み入れ・除外基準はPICOSの枠組みで定義された。

統合には変量効果モデルを用い、標準化平均差と95%信頼区間を算出した。サブグループ解析、感度分析、出版バイアスの解析も行っている。

組み入れられたのは22件の無作為化比較試験(参加者822名)で、スピルリナ、クロレラ、褐藻多糖、またはアスタキサンチンを検討したものだった。

4. 何が改善し、何が改善しなかったのか

続けられる時間は延びたが、速さは変わらなかった。

アウトカム効果量(SMD)95%信頼区間判定
疲労困憊までの時間1.060.16 〜 1.96有意に改善
VO2max0.880.00 〜 1.75示唆的
最大パワー出力0.290.03 〜 0.55小さく改善
タイムトライアル-0.27-0.74 〜 0.21有意な利益なし
クレアチンキナーゼ-0.78-1.28 〜 -0.28有意に低下

疲労困憊までの時間とタイムトライアルで結果が割れた点が、この解析の読みどころである。前者はSMD 1.06と大きく改善し、後者は方向すら逆(負の値は不利側)で有意でない。「長く続けられる」ことと「速く終えられる」ことが一致していない。

VO2maxは効果量こそ0.88と大きいが、信頼区間の下端がちょうど0.00に接している。著者らが「示唆的(suggestive)」という言葉を使っているのはそのためである。

回復についてはクレアチンキナーゼが有意に低下した。運動による筋損傷のマーカーが下がったことになる。

サブグループ解析では、クロレラの補給、より高い用量、有酸素トレーニングの文脈でより大きな効果が示唆された。筋損傷マーカーの低下はレジスタンス運動の後により明瞭だったとされる。

感度分析は主要な所見の頑健性を支持し、出版バイアスの証拠は最小限だった。

5. 使う価値があるのか

「持たせる」目的なら検討の余地があり、「速くする」目的なら根拠がない。

疲労困憊までの時間とタイムトライアルの食い違いは、他のサプリメント研究でも見られる構図である。持久系のレースで問われるのは決まった距離を速く終えることなので、この解析でその指標が動かなかったことの意味は小さくない。

一方、クレアチンキナーゼの低下は回復の文脈で使える所見である。ただしCKは筋損傷の間接的なマーカーであって、翌日の出力が戻っていることを保証するものではない。

種類と用量については、クロレラと高用量が示唆されているものの、具体的な数値が抄録にない。実務的な処方には翻訳できない。

著者らの結論も控えめで、藻類由来のサプリメント、とくにスピルリナとクロレラが、一定の条件下で有酸素運動パフォーマンスを緩やかに高め運動誘発性の筋損傷を軽減しうる、という表現にとどまる。効果は藻類の種、投与戦略、介入期間、トレーニング様式に依存するように見える、とも書かれている。

6. この研究の限界

まず信頼区間の広さである。疲労困憊までの時間(0.16〜1.96)もVO2max(0.00〜1.75)も区間が広く、効果の大きさを絞り込めていない。

対象が混在している点も押さえておきたい。健康な成人とアスリートが同じ解析に含まれており、鍛錬度による違いは抄録から読み取れない。

補給の中身も揃っていない。スピルリナ、クロレラ、褐藻多糖、アスタキサンチンという性質の異なる四つが「藻類由来」として一括りにされている。サブグループ解析でクロレラが示唆されていることは、裏を返せば全体の統合値が種によるばらつきを含んでいることを意味する。

用量と期間も示されていない。「より高い用量」で効果が大きいとされながら、その範囲が分からない。

そして著者らが求めているのは、機序的なエンドポイントを含む高品質な多施設無作為化比較試験である。現時点で選手向けの推奨を作れる段階にはない、という認識が示されている。

7. よくある疑問

レースタイムは速くなるのか

このメタ分析では改善していない。タイムトライアルのパフォーマンスはSMD = -0.27(95%信頼区間 -0.74〜0.21)で有意な利益がなかった。有意に改善したのは疲労困憊までの時間(SMD = 1.06)で、決まった強度をどれだけ続けられるかという別の指標である。

どの種類を選べばいいのか

サブグループ解析ではクロレラの補給でより大きな効果が示唆されている。あわせて高用量と有酸素トレーニングの文脈で効果が大きく、筋損傷マーカーの低下はレジスタンス運動の後により明瞭だった。ただし具体的な用量は抄録に示されていない。

VO2maxは上がるのか

「示唆的(suggestive)」という表現にとどまる。SMD = 0.88と効果量は大きいものの、95%信頼区間の下端が0.00でちょうどゼロに接しており、統計的に確定した所見ではない。

8. 出典

  • Wei Y, Liu S, You T, Liu X, Zhong W, Wu Y, Azhati S, Han Q, Jiang W, Liu C. The Effects of Seaweed and Microalgae Supplementation on Exercise Performance and Recovery: A Systematic Review and Meta-Analysis. Nutrients, 2026.
  • DOI: https://doi.org/10.3390/nu18081289
CITATION The Effects of Seaweed and Microalgae Supplementation on Exercise Performance and Recovery: A Systematic Review and Meta-Analysis(Nutrients, 2026) doi:10.3390/nu18081289 ↗