NUTRITION · 栄養 EV.5 システマティックレビュー

カフェイン・クレアチン・β-アラニン・ビーツは、効く場面が違う。26研究をランナー向けに整理した

ランニング固有のアウトカムを報告した26研究を対象にした系統的レビュー。カフェインはスプリントから持久まで一貫して改善、クレアチンは短時間・反復の高強度に効き持久走では効果が限定的、β-アラニンは高強度耐性、ビーツ由来硝酸塩は短く強い断続的な走りで効いた。効果は運動特異的だと結論づけている。

種目 ラン 出典 International Journal of Innovative Technologies in Social Science(2026) 読了 約6分 公開 2026年8月3日
Woman running along an urban lakeside path, exercising with focus and determination amidst cityscape.
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この研究でわかったこと

  1. 01 カフェインはスプリント・反復・持久のいずれの努力でもランニングパフォーマンスを一貫して改善し、生理的な負担を増やさずに疲労困憊までの時間を延ばした。
  2. 02 クレアチンは短時間・反復の高強度で平均パワーと走速度を保ち疲労を減らしたが、持久走での効果は限定的だった。
  3. 03 ビーツ由来の硝酸塩は主として短く強い断続的な走りで効き、とくに中程度に鍛錬されたアスリートで顕著だった。ベタレインは抗酸化・抗炎症の機序で回復を支えた。

ランナー向けのサプリメントは、どれが優れているかではなく、どの場面に効くかで選ぶことになる。26研究を整理した系統的レビューでは、カフェインが距離を問わず一貫して効いた一方、クレアチンは短く強い局面に、ビーツ由来の硝酸塩は断続的な走りに効果が偏っていた。


用語について。 「ベタレイン(betalains)」はビーツに含まれる色素成分で、硝酸塩とは別の経路(抗酸化・抗炎症)で働くとされる。この論文は単一成分のサプリメントに対象を絞っており、複合的な製品は扱っていない。統合は記述的な統合(ナラティブシンセシス)であり、効果量は算出されていない。

1. 何を調べた研究か

カフェイン、クレアチン、β-アラニン、ビーツ由来の硝酸塩といったエルゴジェニックエイドが、ランニングのパフォーマンスと回復にどう効くのかを整理すること。それが著者らの目的である。

対象をランニングに絞り、しかもランニング固有のアウトカムを報告している研究だけを集めている点が、このレビューの特徴になっている。

2. これまで分かっていたこと

ランニングが高い代謝的・神経筋的・生理的な要求をアスリートに課すことから、パフォーマンスを高め疲労を遅らせるサプリメントへの関心が生まれている、というのが背景の置き方である。

そして個々の成分については研究が積み上がっている。分かっていなかったのは、走りの様式によって相対的な有効性がどう変わるかだった。距離もペースも違う走りをひとまとめに「ランニング」と扱っては、どれをいつ使うべきかが決まらない。

3. どう調べたのか

PubMedを「supplementation」と「running」という用語で検索し(2010〜2025年)、234件の記録を特定した。

タイトル、抄録、全文をあらかじめ定めた基準でスクリーニングした結果、単一成分のサプリメントを評価しランニング固有のアウトカムを報告した26研究が組み入れられている。

研究デザインとパフォーマンステストの異質性のため、統合は記述的な統合として行われた。したがって効果量による比較は行われていない。

4. どの成分がどの走りに効くのか

四つの成分は、効く場面がはっきり分かれている。

成分効いた場面報告された内容
カフェインスプリント・反復・持久のすべて疲労困憊までの時間の延長、加速の改善、代謝の活性化。生理的負担は高まらず
クレアチン短時間・反復の高強度平均パワーの改善、走速度の維持、疲労の軽減。持久走では効果は限定的
β-アラニン高強度・疲労を誘発する運動筋カルノシン量の増加と耐性の向上。最大下の負荷では改善は控えめ
ビーツ由来硝酸塩短く強い断続的な走りとくに中程度に鍛錬されたアスリートで顕著
ベタレイン回復抗酸化・抗炎症の機序による支持

最も広い場面をカバーしているのはカフェインである。スプリントから持久まで一貫して改善したと記述され、しかも生理的な負担を高めずに得られたとされている。

クレアチンとβ-アラニンは、いずれも高強度側に寄っている。クレアチンは持久走での効果が限定的、β-アラニンは最大下の負荷での改善が控えめ、という書き分けがされている。

ビーツ由来の硝酸塩については、効いた対象が「中程度に鍛錬されたアスリート」と限定されている点が目を引く。鍛錬度が上がると効きにくくなる可能性を示唆する記述だが、その理由はここでは説明されていない。

結論として著者らは、四つの成分がいずれもエルゴジェニックな効果を発揮するが、その利益は運動特異的であり、サプリメントをランニングの要求とアスリートの特性に合わせることがパフォーマンスの最大化に不可欠だ、と述べている。

5. 自分のレースに合わせてどう選ぶか

自分の走りがどの場面に当たるかを先に決める。この論文が実務に与えるのはその手順である。

トライアスロンのランを想定すると、大半は持久側の努力になる。この整理に従えば、そこで支持されるのはカフェインであって、クレアチンやビーツ由来硝酸塩ではない。クレアチンの効果は短く強い局面に、硝酸塩は断続的な走りに寄っていた。

一方、スプリントディスタンスの終盤やドラフティングレースの駆け引きのように、断続的で強度が上下する走りが混じる場合は、判断が変わりうる。ただしこのレビューが扱ったのは単一成分の研究であり、トライアスロンのレース状況を直接検証したものではない。

回復についてはベタレインが挙げられているが、機序(抗酸化・抗炎症)の記述にとどまる。回復の何がどれだけ改善したのかという指標も数値も示されていない。

そして用量とタイミングは、この論文からは決められない。記述的な統合であるため、成分ごとの推奨量は示されていない。

6. この研究の限界

第一に、統合が記述的であることだ。効果量も信頼区間もないため、「一貫して改善した」と「限定的だった」の差がどれだけの大きさなのかを確かめられない。成分間の比較も定性的な印象の域を出ない。

第二に、検索がPubMed単独である。網羅性には制約があり、他のデータベースにしかない研究は原理的に入らない。

第三に、対象集団の情報がない。26研究に含まれた参加者の総数、性別、競技レベルの分布は抄録に記載されていない。硝酸塩について「中程度に鍛錬された」という限定が出てくる一方、他の成分ではその区別が示されていないのも、この情報不足と無関係ではないだろう。

第四に、バイアスリスクの評価方法が抄録に示されていない。組み入れ基準は述べられているが、各研究の質がどう判定されたのかは追えない。

そして掲載誌の性質上、単独で強い根拠として扱うのは避けたい。方向性はこの分野の一般的な理解と整合しているが、成分ごとの判断は効果量を報告した個別のメタ分析に当たり直すのが妥当である。

7. よくある疑問

マラソンやロングのレースにクレアチンは効くのか

このレビューの整理では、クレアチンの効果は短時間および反復の高強度な努力に集中しており、持久走における効果は限定的だとされている。平均パワーの改善、走速度の維持、疲労の軽減が挙げられているのはいずれも短く強い局面についてである。

ビーツジュースは長い距離でも効くのか

この整理では、ビーツ由来の硝酸塩が効いたのは主として短く強い断続的なランニングで、とくに中程度に鍛錬されたアスリートにおいてだった。長距離を主眼にした効果としては挙げられていない。

カフェインはどの距離でも効くのか

このレビューの範囲では、カフェインはスプリント・反復・持久のいずれの努力でも一貫してランニングパフォーマンスを改善したとされ、四つの成分のなかで最も広い場面をカバーしている。疲労困憊までの時間の延長、加速の改善、代謝の活性化が、生理的な負担を高めずに得られたと記述されている。

8. 出典

  • Jurczak D, Kafara Z, Koronczok-Matusiak J, Kowalczyk D, Król W, Kulka K, Lechowska Z, Kafara A, Szarek R, Michta K. Selected Dietary Supplements and Their Impact on Endurance and Recovery in Runners: A Systematic Review. International Journal of Innovative Technologies in Social Science, 2026.
  • DOI: https://doi.org/10.31435/ijitss.1(49).2026.4565
CITATION Selected Dietary Supplements and Their Impact on Endurance and Recovery in Runners: A Systematic Review(International Journal of Innovative Technologies in Social Science, 2026) doi:10.31435/ijitss.1(49).2026.4565 ↗