NUTRITION · 栄養 EV.5 メタ分析

競泳のサプリで有意差がついたのはクレアチンだけだった

23研究422名の競泳選手を統合したメタ分析。解析されたサプリメントのうち、泳パフォーマンスに有意な効果を示したのはクレアチンのみで、残りはすべて有意差なしだった。ただし著者らはクレアチンについても「エビデンスはまだ限定的」と述べている。

種目 スイム 出典 Journal of the International Society of Sports Nutrition(2025) 読了 約5分 公開 2026年7月27日
A person swimming in a clear blue outdoor pool with lane dividers.
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この研究でわかったこと

  1. 01 泳パフォーマンスに有意な効果を示したのはクレアチンのみ(効果量 -0.46、95%信頼区間 -0.75〜-0.17、p = 0.002、I² = 11%)。
  2. 02 解析された他のサプリメントはいずれも有意差に届かなかった(すべてp > 0.05)。
  3. 03 それでも著者らはクレアチンの推奨を強めず、「この補助食品を支持するエビデンスはまだ限定的」と結論している。

競泳選手のパフォーマンスを高めるサプリメントとして統合データで有意差がついたのは、クレアチン1つだけだった。23研究422名を対象としたメタ分析での効果量は -0.46(95%信頼区間 -0.75〜-0.17、p = 0.002)。解析された他のサプリメントはいずれも有意差に届かず(すべてp > 0.05)、著者らはクレアチンについてもエビデンスは限定的だと結論している。

1. 何を調べた研究か

競技レベルの水泳選手において、パフォーマンスを高める目的で使われているサプリメントは、実際に泳タイムを動かしているのか。既発表の研究が示している効果を統合して確かめる、というのが著者らの掲げた目的である。

2. これまで分かっていたこと

著者らは前提として2つを挙げている。ひとつは、競泳選手におけるスポーツサプリメントの摂取率が高いこと。もうひとつは、そのうち安全性・有効性・合法性が科学的に証明されているものはごく一部にとどまること。

摂取の広がりと裏づけの薄さのあいだにギャップがある、という認識から、実際に何が効いているのかを整理し直す必要があった。

3. どう調べたのか

PRISMAガイドラインに従い、6つのデータベースを対象に系統的検索を行った。組み入れの条件は、スポーツサプリメントの効果をプラセボと比較して解析している研究であること。該当した研究をメタ分析にかけている。

最終的に23研究が組み入れられた。方法論的な質はPEDroスケールで採点され、16研究(69.6%)が「excellent」、7研究(30.4%)が「good」と判定されている。参加者は競泳選手422名で、内訳は男性61.8%・女性38.2%。評価対象の距離は50mから800mまでで、インターバル形式の手順を用いた研究も含まれている。

4. 泳ぎが速くなったサプリメントはどれだったのか

有意差がついたのはクレアチンだけだった。効果量が負なのは、タイムが短くなる方向を意味する。

サプリメント効果量95%信頼区間p値
クレアチン-0.46-0.75 〜 -0.170.00211%
解析された他のすべて有意差なし> 0.05

研究間のばらつきを示すI²は11%と小さく、クレアチンについては結果が研究ごとに大きく割れているわけではない。

一方で結論部の記述は、この表より広い範囲に及んでいる。著者らは、クレアチンの補給は競泳選手にエルゴジェニックな利益を示したとしつつ、この補助食品の使用を支持するエビデンスはまだ限定的だ、と付け加えている。加えて、重炭酸ナトリウムとβ-アラニンは解糖系の要求が高い距離でパフォーマンスを高めうること、カフェインは運動の60分前に体重1kgあたり3〜6mgの用量で有効であること、そしてビーツジュースなど他のサプリメントについては潜在的なエルゴジェニック効果を確認するためにさらなる研究が必要であることを述べている。

つまり、メタ分析で有意差がついたものと、結論部で言及されているものは範囲が違う。前者はクレアチン1つだけである。

5. トライアスロンのスイムにこの結果をどこまで持ち込めるのか

距離帯がずれている、という一点をまず押さえておきたい。対象は競技レベルの水泳選手であり、評価された距離は50mから800mである。トライアスロンのスイムレグはこれより長い距離で争われることが多い。つまりこの統合結果は、トライアスリートが実際に泳ぐ距離帯をそのまま検証したものではない。距離帯の外側へ持ち出すときは、それが論文の範囲外だという自覚が要る。

そのうえで、この論文がいちばん役に立つのは「何を足すか」ではなく「何を足さないか」の判断だろう。プラセボ比較の研究を集めて統合した結果、有意差に届いたのは1つだけだった。棚に並んでいるものの多くは、少なくとも競泳のパフォーマンスに関しては、統合された証拠を持っていないということになる。

クレアチンについても、有意差はついたが著者ら自身がエビデンスは限定的だと書いている。使うか使わないかを決めるにあたって、この論文は「効くらしい」以上の強い後押しを与えてはいない。

カフェインについて著者らが挙げている「運動60分前に体重1kgあたり3〜6mg」という条件は、結論部に書かれた具体的な数字としてそのまま参照できる。ただしこれはメタ分析で有意差が確認された項目ではない点に注意したい。

なお、この論文は用量やタイミングの最適化を検証したものではなく、また安全性やアンチ・ドーピング上の適格性を個別に保証するものでもない。摂取を検討する場合の確認は、この論文の外側の作業になる。

6. この研究の限界

第一に、有意差がついた項目が1つしかないという結果自体が、他のサプリメントが「効かない」ことの証明にはならない。有意差なしは、統合されたデータの範囲で差を検出できなかった、という意味にとどまる。

第二に、著者ら自身がクレアチンについても「エビデンスは限定的」と明記している。23研究422名という規模は、サプリメントの種類ごとに分けて見ればさらに小さくなる。

第三に、評価された距離が50m〜800mに限られている。持久系の長い距離について、この統合結果は直接には何も述べていない。

第四に、結論部で触れられている重炭酸ナトリウム、β-アラニン、カフェインの記述は、メタ分析で有意差が示された結果とは区別して読む必要がある。ビーツジュースについては、著者らが明確にさらなる研究が必要だとしている。

7. よくある疑問

トライアスロンのスイムにも当てはまるのか

そのままは当てはめられない。対象は競技レベルの水泳選手で、評価された距離は50mから800mまでである。この距離帯より長い泳ぎについて、統合結果は何も述べていない。持ち込むこと自体は自由だが、それは論文の範囲外の判断になる。

クレアチンでどれくらい速くなるのか

抄録が示しているのは効果量 -0.46(95%信頼区間 -0.75〜-0.17、p = 0.002、I² = 11%)までで、タイムの秒数への換算は示されていない。しかも著者らは結論部で、この補助食品の使用を支持するエビデンスはまだ限定的だと付け加えている。有意差はついたが、強い後押しにはなっていない。

有意差がつかなかったサプリメントは飲んでも無駄なのか

無駄だという意味ではない。有意差なし(すべてp > 0.05)は、統合されたデータの範囲で差を検出できなかったという意味にとどまり、効果がないことの証明ではない。実際、著者らは結論部で重炭酸ナトリウムとβ-アラニンが解糖系の要求が高い距離で有効でありうること、カフェインが運動60分前に体重1kgあたり3〜6mgの用量で有効であることに触れている。ただしこれらはメタ分析で有意差が確認された項目ではない。

8. 出典

  • Domínguez R, López-León I, Moreno-Lara J, Rico E, Sánchez-Oliver AJ, Sánchez-Gómez Á, Pecci J. Sport supplementation in competitive swimmers: a systematic review with meta-analysis. Journal of the International Society of Sports Nutrition, 2025.
  • DOI: https://doi.org/10.1080/15502783.2025.2486988
CITATION Sport supplementation in competitive swimmers: a systematic review with meta-analysis(Journal of the International Society of Sports Nutrition, 2025) doi:10.1080/15502783.2025.2486988 ↗